イオンへのなりやすさ(イオン化傾向)は日常生活でなかなか意識する機会はありません。だからこそ、理科の授業の中で科学的な事象と出合わせる必要があると考えます。
今回は、銅チップ(Cu)に硝酸銀水溶液(AgNO3)を数滴垂らすことで、イオンへのなりやすさを実感す
る実験を紹介しました。この実験はいくつかの「良さ」があるので、良さに着目して報告します。
● 実験の準備と方法
(1) 準備物:銅チップ、硝酸銀(粉末)、蒸留水、スポイト、シャーレ
(2) 硝酸銀水溶液の作成
硝酸銀水溶液をできるだけ濃く作る。硝酸銀水溶液は、1回の実験で数滴しか使用しないので、耳かき1杯程度の硝酸銀を1mL~2mL(スポイト1吸程度)の蒸留水で溶解する。
(3) 方法
シャーレに銅チップを置き、銅チップの端にスポイトを用いて硝酸銀水溶液を1~2滴垂らす。そのまま、放置すると始めの10秒ほどで銅チップが銀色にメッキされていくのが分かる。30秒ほどで金属樹のようなものが観察できる。1分~3分ほどで水溶液が青色に変化していく様子が分かる(図1)。
● 【良さ①】 銀イオンの金属化に気付く
銅が銀色にメッキされることから「銀イオンが金属になって出てきたのではないか」という仮説を立てることができる。実際には以下のような反応が起きている。
Ag+ 十 e- → Ag
● 【良さ②】 銅のイオン化に気付く
水溶液が青色に変化していくようすから「金属銅が銅イオンになって溶けているのではないか」という仮説を立てることができる。実際には以下のような反応が起きている。
Cu → Cu2+ 十 2e-
● 【良さ③】 反応が速い
上記のような反応が3分以内に起こるため、授業時間内で実験と仮説の立案が完結する。
● 【良さ④】 廃液処理が楽
実験後はティッシュぺーパーで溶液をふき取り、燃えるごみへ捨てる。使用する溶液が少ないため、廃液保管等する必要がない。
● 留意点
市販の硝酸銀水溶液(0.1mo1/L)ではうまくいかない。濃度が低いため、反応時間が遅いのである。粉末を購入し、自分で水溶液を作ることをおすすめする。
双眼実体顕微鏡などで、観察するとさらなる感動や発見を生み出すでしょう。
この記事の問い合わせ先:高橋政宏(理科サークル「SCIENTIA」)
m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)
この記事は、「科教協静岡ニュース」に、SCIENTIAのニュース「Serendipity」から引用して掲載した。