~教科書の世界が実は身近で起きていたと実感できる「大地の変化」の話~
中学1年生の火山と地震を「高草山の成り立ち」と関連付けて授業を進めました。これまで、生徒が主体的に進める授業を模索し、授業の形式にこだわってきました。しかし、授業に行き詰まり、授業がつまらなくなることもありました。そこで、教材に立ち戻り、さらに地元の教材で授業ができないかと考えました。
噴火の仕組みや火成岩、鉱物について学んだ後に、高草山がどのようにできたのかを学習しました。導入で高草山の成り立ちについて生徒に質問すると、高草山は土砂の堆積によってできた、土地の隆起によってできたといった意見が出ました。
授業の展開場面では、ヒントとして図A~Cに示した3つを出し、班で3つに分かれて調べるジグソー法を使って学習を進めました。特にCの噴火モデルは、一般的に生クリームの絞り袋が使われます。しかし、理科室に道具がなく困っていたところ、浮沈子に使われる醤油入れと牛乳パックで代用しました。
生徒はよく調べていて、資料Aから高草山はマグマでできていたこと、資料Bから枕状溶岩はマグマが海底で急激に冷やされてできた証拠であることに辿り着きました。
生徒がまとめたジャムボードを下に示します。生徒は予想に反して、高草山はマグマの噴火によってできたことに驚いていました。課題として、Cの噴火モデルの活用が不十分になってしまうことがありました
火山の授業の後は地震、プレートの動き、そして地層という順番で進めます。全ての授業を紡いでいくことで、焼津の成り立ちに関する物語を完成させたいと考えています。
生徒の「志太平野」と「高草山」の理解の実態
Googleマップで焼津を示しながら、焼津の土地の特徴を聞くと、まず駿河湾を挙げました。次いで、高草山や大井川を挙げました。さらに「平らだ」という発言が出てきて、「平らじゃないだろ」といったやり取りを生徒たちはしていました。そして、志太平野であることを伝えると驚いていました。さらに、昔は海だったことについて触れると、さらに驚いていました。焼津の土地の成り立ちについて、高草山が火山によってできたことを予想する生徒はいるものの、志太平野については「火山灰が降り積もったから」、「津波で土砂が運ばれてきた」、「プレートが移動した」などと予想し、大井川からの土砂の運搬によってできたことを予想する生徒は全くいませんでした。小学校6年生で「地層のでき方」や、「火山の噴火や地震による土地の変化」について学習しているため、火山や地震といった知識は持っているが、その知識と焼津の土地の成り立ちが結び付けられていない現状が明らかになりました。
(執筆:焼津市立豊田中学校 杉本寛 pero_hiroshi@hotmail.com)
この実践は、科教協静岡主催の「静岡理科の会」の例会(2024.2.3)で紹介され、続いて、第15回「研修交流会」(2024.5.12)で改めてまとめたものが紹介されました。この報告は、後者を元に修正したものです。(2024.6.26)