「静岡理科の会」(2024.2.3)にての、上久保廣信さん(NPO法人「地下からのサイン測ろうかい」)の報告をまとめました。
① 地震活動の活発化と御前崎の沈下速度の減少
・過去の例では、2011年3月に発生した東北地方太平洋地震で、地震発生の7年10か月前から、小さな地震(太平洋プレートの深さ30~60kmでマグニチュード0.6以上の地震)の発生回数が増加していました。
・静岡県西部地域直下のフィリピン海プレート内では、2020年頃から小さい地震が増加しています。
上の左図(東海地方の積算地震回数)によると、2020年ごろまでの地震発生率は平均的に315回/年、それ以降は340回/年に上昇しました。約1割ほどのアップで、2020年以降、スラブ(プレートのこと)にかかる力が増大していることを表しています。(「地下からのサイン測ろうかい」の「2024.1.16地震活動解説情報」より。次も同じ)
・フィリピン海プレートの沈み込みに引きずられて、御前崎の地面はどんどん沈下していますが、数年前から沈下速度が鈍ってきています。
上の右図は、掛川に対して御前崎の地面の高さがどのように変化しているかを表しています。2005年から2020年頃まではほぼ直線的に0.657cm/年の率で沈下し、2020年頃から沈下率は約半分の0.338cm/年の率に減少しています。それは、プレート間固着による東海地域の地面を押し下げる力が弱くなってきていることを示していて、プレート間の固着状況に変化が生じているのでしょう。
・フィリピン海プレートの上面での、東海地域にある固着域(プレートとプレートの境が固着していて、そこが剥がれて地震が起こると考えられている部分)の近くで、スロースリップ(境がずるずるとゆっくり動く部分)が拡大しています。スロースリップが固着域に近づくのは、南海トラフ地震の発生を強く促します。
・南海トラフ地震の地域の地面の沈下は、和歌山県の串本では2013年頃に一回沈降速度が鈍り、現在もその沈降速度が継続しています。また、高知県の室戸岬では沈下速度の変化はありません。
② 東海地域の地下水位と地下水温の変化
・焼津市大富小学校の地下水位のデータ(右図)は、2.8cm/年で上昇傾向にあります。これは地盤低下を意味して、南海トラフ地震(東海地震など)の長期的前兆の可能性があります。最近、水位上昇率が上がっています。(「地下からのサイン測ろうかい」の「2023.12.21東海観測情報」より。次も同じ)
・上のグラフは、左から浜松市中郡小学校、沼津市沢田、神奈川県伊勢原市の水温です。中郡小学校の2021年からの異常は機器の故障かもしれません。近年の東海各地の水温や水位に目立った変化が見えています。東海地震のことを心配しなけばなりません。岩盤に力がかかると水温が上がる、スロースリップが起こると水温が下がるという仮説も考えられます。(図のデータのない部分はカットして表示)
【参考】「地下からのサイン測ろうかい」のホームページ