「資料を見ただけではイメージが湧かない」、「景色の広がりを想像することができない」。これらの言葉は、理科の地学分野を中心に物事を空間的な視点で考える場面で、生徒からよく聞こえてくる声です。そこで今回は天体分野において、空間的な視点を大切にした授業を行いたいと考えました。
始めはICTの活用を考えましたが、ICT活用の際に使用する画面は平面で、B5サイズ程度の範囲でしか考えることができないため、生徒が自分自身の周りにはどんな景色が広がっているのかを想像しにくいことに気が付きました。そこで、理科室全体を使って天球を表したり、各班1つ地球儀模型や星座カードを配布したりすることで、生徒が空間的な視点で考えることができる工夫をすることにしました。
(1) 実践1 星の一日の動き
課題 「北の空ではなぜ北極星を中心に星が動くのか」
「北極星はなぜ動かないのか」「ほかの星はなぜ動いて見えるのか」「なぜ星の運動は反時計回りなのか」について考える授業を行いました。理科室に、東西南北それぞれの空における星の動きを示した図(図1)を掲示し、天井には星の形をした紙を貼りつけました(図2)。生徒はタブレット型端末や、地球儀模型を活用して課題解決に取り組みました(図3)。
(2) 実践2 星の一年の動き
課題 「夜空に見える星座は一年を通してどのように変化するか」
季節によって見える星座はなぜ変化するのかについて、星座カードと地球儀模型を使って考える活動を行いました(図4)。季節・時間が変化すると、どの方角にどのような星座が見えるのかを考えました。(例会では、紙コップなどに星座を書き、立てることができるというアドバイスをいただきました)
小さな模型を各班に1つ配ることで、考えることが苦手な生徒であっても、得意な生徒が模型を動かす様子を目の前でみて理解したり質問をしたりして、交流を図る場面を多くみることができました。宇宙という大きなスケールを考えるためにも、タブレットの画面だけでなく机上を宇宙と見立てて考えたり、時には理科室全体を宇宙として見立てて考えたりすることが空間的視点を働かせることにつながると、今回の実践と例会での話し合いを通して感じることができました。 (執筆協力:青嶋)
この記事の問い合わせ先:高橋政宏(理科サークル「SCIENTIA」)
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この記事は、「科教協静岡ニュース」(2023.11)に、「Serendipity」(2022.12) から引用して掲載した。