雲のでき方を東京大学CoREFのホームページを参考にして,ジグソー型の学習でまとめました。そうすると,思いのほか生徒たちが進んで教科書やネッ トで調べたり,仲間と話し合ったりして自分の考えをまとめていました。普段,ただ聞いているだけの生徒が自分の考えを書いています。この姿に「これはいい!」と思いました。
時を同じくして,授業時数が限られてきてピンチになっていました。これまでならば,講義型の学習でプリントの穴を埋めていくような授業を展開していました。しかし,今回はジグソー型の学習を活用してみました。その理由は,ジグソー型ならば生徒自身でどんどん学習を進めて時間の短縮ができるのではと考えたからです。
以下に,実践した中から3つを紹介します。ちなみに,教科書は啓林館を使っており,課題やワークシートに添付してある図は教科書からとってきています。一部,等圧線の問題は浜島書店の『理科の学習』からです。
● 天気図の読み方(図1)
ここでは,最初に等圧線についての説明と練習問題を解かせました。その後,以下の3つの課題を班で分担させたのち,課題ごとに集まって調べ,そして班に戻ってそれぞれの考えを出し合い,Yチャートにまとめました。課題は以下の通りです。
課題A:高気圧や低気圧付近の風向は,それぞれの中心から見て,どのようなちがいがあるか。
課題B:雲は,高気圧と低気圧のどちらに近いところに多く分布しているか。
また,高気圧に近いところと低気圧に近いところではどちらが晴れやすいだろうか。
課題C:等圧線の間隔と風の強さには,どのような関係があるか。
● 「低気圧や高気圧の動きと天気の変化にはどのような規則性があるのか」(図2)
以下の課題を分担して調べ,班に戻って逆Yチャートにまとめたのち,学習課題に対する答えを全体で確認しました。
課題A:低気圧の動きを調べる。5月14日に,東経125°,北緯30°付近にある低気圧の中心の24時間ごとの位置を,白地図上に×印で記入し,×印の間を線で結ぶ。
どちらからどちらの方向へ移動していたか。1日におよそ何km動いていたか。
課題B:高気圧の動きを調べる。5月13日に,東経140°,北緯25°付近にある高気圧の中心の24時間ごとの位置を,白地図上に○印で記入し,○印の間を線で結ぶ。
どちらからどちらの方向へ移動していたか。1日におよそ何km動いていたか。
課題C:福岡の気圧と天気の変化を調べる。5月13~16日の福岡のおよその気圧を天気図から読みとってグラフに表し,その時の福岡の天気も記号でかきこむ。
低気圧や高気圧の移動による気圧の変化と天気の変化との間には,どのような関係があるか。
● 「前線の通過と天気の変化にはどのような関係があるのだろうか」(図3)
以下の課題を分担して調べ,班に戻ってベン図にまとめたのち,それぞれの課題に対する答えの共通点(ベン図の共通部分)を全体で確認しました。
課題A:気温が急に下がったのは何時ごろか。また,このとき,風向はどのように変化したか。
気温や風向の急な変化が起こった理由を, 左の同じ日の天気図を参考にして考えてみよう。
課題B:気圧はどのように変化したか。また,気圧が変化した理由を考えよう。
これら実践を例会で紹介したときには,ジグソー型の学習がもつ課題について話題に上がりました。それは,分担して調べて,発表しあって終わるという形が多いことです。そうすると,自分の担当以外は聞いて写すだけで身につきません。今回で言うと,1つめに紹介した天気図の読み方ですが,Yチャートにまとめて終わりになっています。季節の天気をまとめたときも同様でした。そのため,分担して調べたことをまとめることで解決できるような学習課題が求められます。2つめ,3つめに紹介したものは分担したことを互いにまとめて終わるだけではなく,まとめたことから何が言えるかまで書くようになっているので良い展開だったと考えます。 (執筆協力:杉本)
この記事は、理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№76から引用し編集したものです。
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