電解質である硫酸と水酸化バリウム水溶液は,中和して硫酸バリウムと水を生じます。塩である硫酸バリウムは水に不溶なので,中和点で水溶液はほぼ水だけとなります。つまり,電流を流さなくなるというわけです。
〔H2SO4+Ba(OH)2→H2O+BaSO4↓〕
電気を通すはずの電解質同士(酸性とアルカリ性)を混ぜると電気を通さなくなる不思議から,課題を見いだすことができると思い授業を展開しました。
中和の授業(実験)の流し方
電解質が2種類あります。(※1)
電解質Aは電気を通しますね。(演示する) 電解質Bも電気を通しますね。(演示する)
電解質Aに電解質Bを加えていくと,電球の明るさはどのようになるでしょうか。
ア 明るくなる イ 暗くなる ウ 変化しない エ 迷っている
アの意見 「電解質に電解質を加えていくのだから明るくなるはず」
イの意見 「中和ということを聞いたことがある」
ウの意見 「加えたからと言って電気を通す性質はもともとあるのだから,消えない」
教師:では演示をしてみましょう。
硫酸に少しづつ水酸化バリウムを加えていく。(※2)
すると,電球の明るさが次第に小さくなり,やがて明かりがつかなくなる。(図1・図2)
教師:では,さらに電解質Bを加えてみることにしましょう。
水酸化バリウムを加えると,再び電球が点く。(図3)
生徒:え?なんで?どういうことだ?
教師:これから追求したいこと,疑問に思ったことをノートに記録しておきましょう。
生徒からの疑問
・なぜ一度消えるのか? (またつくのもなぜか)
・硫酸バリウムの(加える硫酸の)量や濃度と明るさは関係があるのか
・なぜ非電解質になるのか
・イオン的に何が起こっているのか?中和つて何?
・水酸化バリウムと硫酸に限った反応なのか?
授業はこの後,水溶液Aは「硫酸」,水溶液Bは「水酸化バリウム」であることを明かしたのち,2つの液体を混ぜたときに,何が起こるかをモデルを使って考えさせました。
実験そのものは目新しいものではありませんが,展開を工夫すると探究的になることがわかりました。
※1 水酸化バリウムは飽和水溶液(約0.2mol/L)を用いる。蒸留水100mLに約3.9g溶ける(20℃のとき)。硫酸は0.3mol/L程度に調整する。蒸留水300mLに硫酸(98%)5mLを加える。
※2 モル濃度を調整してあれば,体積比を考えながら入れる。反応に時間がかかるので,中和点付近では入れすぎて中和点を通過しないよう注意しながら入れる。
高橋政宏(理科サークル「SCIENTIA」)
連絡先:m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)
この記事は、「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№66(2020.12)から転載して編集しました。
【関連記事】
ピッカリテスター(水溶液 通電を確認する手作り装置)(2012.08)