(白糸の滝の項は2023年11月に修正)
富士山の麓周辺では豊富に水が湧き出しています。 それは、富士山に降った雨や融雪が新富士火山(約1万1000年前以降)の溶岩流にしみ込み、この溶岩の中や下層との境を流れるているものです。 この新富士火山の溶岩流の下には、古富士火山の泥流堆積層などの難透水層があって、その中には水がしみ込みにくいようです。
富士山の中腹でしみ込んだ水は、十数年とも数十年ともいわれる年数をかけて地下水として流れ、麓に湧き出しています。
ただし、富士山で雪解けが始まったり中腹以上で大雨が降ると、麓で湧水量が増え池の水位が上がる現象があるようです。 このことから富士山の地下水は、上流でしみ込んだ水の圧力がすぐに伝わり下流でしみ出す構造(被圧地下水)と考えられています。
多量の湧水がある場所は、静岡県の三島市、富士市、富士宮市、山梨県の富士五湖、忍野八海などがあります。
富士山の構造と噴火の歴史については、
別の記事「 富士山の火山地形の見学」を見てください。
① 洛寿園内の小浜池(三島市)
三島駅南口の前にある洛寿園(らくじゅえん)には、富士山の湧水が湧き出す小浜池(こはまいけ)があります。
池の水がなくなり、池の底の溶岩がむき出しになったこともあります。上流部での地下水のくみ上げすぎが原因のようです。
② 白滝公園(三島市)
洛寿園の正門(東口)の前にある公園です。街中であるのに、溶岩の間から水が湧き出して池になっています。
③ 源平川(三島市)
源平川(げんべいがわ)は洛寿園の小浜池から流れ出して、市街地を流れています。 川沿いには遊歩道があります。水温は年間を通して15℃前後です。
④ 三島梅花藻の里(三島市)
三島梅花藻(ミシマバイカモ)は、キンポウゲ科の多年草で清流に育ちます。 もともとは、三島洛寿園で発見されました。 日当たりが良く冷たい水でないと育たないため、水質のバロメーターともいわれています。
1950年代の中頃に、工場での地下水の大量くみ上げと、生活排水での環境汚染で、三島では絶滅しました。 その後、佐野美術館の湧水池を借りて、隣の清水町の柿田川から移植されたものが育てられています。
⑤ 柿田川(清水町)
柿田川は、国道1号線のすぐ横の崖の下から湧き出しています。数十か所から湧き出していて1日の湧出量は約100万トンといわれています。 湧水だけを集めて、約1.2kmで狩野川に合流するので、きわめて珍しい清流です。
柿田川公園があり、川沿いに遊歩道があります。
⑥ 原田・吉永地区の泉の郷(富士市)
住宅地の中も湧水が流れているような地区で、広い範囲に川や湧水を源にした池が点在しています。
駐車場は、少し離れた原田公園内のものがやや大きめです。
⑦ 浅間大社の湧玉池(富士宮市)
本宮の境内にある湧玉池は、かっては富士山の登山者が禊ぎをした場所です。溶岩の縁から湧き出した水が池を満たし、神田川へ流れ出しています。
近くには、静岡県富士山世界遺産センターもあって、富士山の眺望が望めます。
⑧ 白糸の滝(富士宮市)
白糸の滝の崖では、下部から古富士火山の泥流堆積物、黄褐色ローム層、上部は新富士火山初期の溶岩です。溶岩には割れ目(境)もあって水を通し、溶岩の中やその下との境から水が噴き出しています。一部の水は芝川からも流入していると考えられています。毎秒1.5トンの水量があります。(2023年11月に一部修正)
芝川の上流の猪之頭(いのかしら)地区には、同様でやや小ぶりな陣馬の滝もあります。
⑨ 猪之頭地区の湧水(富士宮市)
猪之頭(いのかしら)地区の湧水も豊富です。豊富な水量を利用したニジマスの養殖が行われていて、上の写真は県営富士養鱒場内の様子です。 いくつもの広い飼育池にニジマスが泳いでいて、見学(有料)もできます。
その下の写真の奥に見られるのは、冷たい水を利用した地区内のわさび田です。
火山地形に関しては 「富士山の火山地形の見学地紹介(増補版)」もあります。
写真・文責:長谷川静夫(skrc@sf.tokai.or.jp)