講演の要旨 四ヶ浦 弘氏(「金沢・金の科学館」代表)
この記事は、 科教協静岡第11回「研修交流会」 (2018.4.30)の全体会での四ヶ浦さんの講演内容を、科教協静岡の責任で編集しまとめたものです。大変興味深い内容を、鮮やかな実験を交え、巧みな見せ方とトークで紹介されました。
① 金・銀・銅…金属の性質
・ 金と銅は色がついているが、他の金属は銀色。
・ 電気の伝導度は、1位銀、2位銅、3位金→厚さをそろえて(薄い箔で)、豆電球テスター等で確認できる(LED電球では差がつかない)。では、なぜ高価な金がスマホで使われる?→金と白金はさびない。
・ 金・銀・銅は磁石につかない。磁石につくのは、鉄・ニッケル・コバルト(以上は鉄族) ・ガドリニウム。
・ ナトリウムもナイフで切ると、切り口が銀色で電気も流れる(金属)。 カルシウムもみがくと銀色に光る。 ともに、 すぐにさびて(酸素と化合して) 白くなる。
・ 金箔と真ちゅう箔(偽金箔で「黄銅」」とも書く=銅と亜鉛の合金)との見分け方→より薄くできる金箔(1万分の1mm)は光を通し、青い光が透けて見える(青い光だけ透過・吸収し、残りを反射すると金色)。→硝酸をたらすと、 金箔は溶けないが、 偽金箔は溶けて、 液に銅イオンの青色か青緑色が現れる。
・ 金は王水(濃硝酸と濃塩酸を1:3で混ぜた液)に溶けて、黄色になる。金が溶けた液、他の金属や有機物に触れると金が出てくる。
・ 金箔には銀(銅も)が微量に混じっている。銀が入るため純金と比べると白い。砂金で、70%が金で30%の銀を含む。
・ 銀箔と白金箔の違い→白い方が銀で、 電気伝導度は銀が10倍大きい。 ガスバーナーで箔が熔けるのが銀(ガスバーナーの炎は1300℃、 融点は銀が962℃、 白金が772℃)。
・ 銀はさびる(硫黄と結合して硫化物になる)→ゆで卵に銀を突きさすと、硫黄を含むタンパク質がある白身の部分で、黒く変色する。 さびた銀は食塩水につけてマグネシウムスティック(リボン)を押しつけながらこすると、 すぐに銀に戻る。
・ 白金箔の表面をきれいにして(バーナーの炎を吹きかけて)、 冷めてからボンベの水素を吹きかけると、 爆発的に燃焼する。 (白金の触媒作用)
【参考:「実験で楽しむ金属のサイエンス金・銀・銅の不思議を探る」
48ページ 1,200円 「金沢・金の科学館」発行 https://shikaurah.thebase.in/ 】
② 実験で楽しむ宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
・ 参考にした資料:「宮沢賢治と化学」板谷英紀著裳華房 1188円 1988年
・ 「銀河鉄道の夜」は、「一番化学の美しさが表現されている。」
・ 「光のパイプオルガン」→チンダル現象:ガラス容器の中の水に少しミルクを入れると、当てた光が反射(散乱)して光る。
・ 「アルビレオ(はくちょう座β星で金と青の二重星)の観測所」→青ガラスを黄色のライトに重ねると緑色を示す。
・ 水晶の科学→ 1)鳴き砂(石英の砂で) 2)摩擦発光(水晶を擦り合わせると光る) 3)熱伝導の違い: 「水晶は冷たい」→(SiO2の結晶が水晶、 非晶質がガラス) さわると水晶の方が冷たく感じるが、同じ環境にあるので温度は同じ。冷たく感じるのは熱を伝えやすいため (熱伝導率がガラス:水晶=1:8、銅は400倍、ダイヤモンドは20
00倍)。→氷の上に置くと、氷を溶かしへこみを作り沈む込む速さは、熱伝導率が大きいほど速い。
・ 炎色反応:リチウムは赤色(写真左)、銅は緑色(写真右)。(金属イオンの色)
③ 金・銀・銅の不思議を探る (中学校・高校講座にて)
「本物を見せることが生徒の心に火をつける。 」
1) 金か偽金かの見分け方
・ 硝酸をたらすと、金は変化しないが、偽金(真ちゅう)は溶ける。(しかし表面のことしかわからない)
・ 密度を調べる(金19.3g/cm3)。→質量をはかりで量る。体積(cm3)は浮力(g分の力)と同じ数値であることからわかる。それは、はかりに乗せた水の中に糸でつるした物体(写真では指輪)を浸けると、 目盛の増加分が浮力の大きさ。
・ しかし、タングステン(密度19.3g/cm3)に金めっきしたら、上記の方法では見わけられない。 (金めっきをした偽金指輪がある)
・ 表面に印字がしてあると、 そこにはタングステンが現れるので銀色に。(厚く純金でくるんだ偽物や、 表面がチタンの酸化物の金色もある)
2) 金箔を食べても大丈夫か?→少量では便として排出される(小さい塊で実験済)。大量だと腸壁に張り付いてしまうこともある。
3) 銀のさびを取るには、 銀よりイオン化傾向が大きいものを使う。 →マグネシウム、 亜鉛(鉄に亜鉛めっきをしたもの=トタンでも可能)を、食塩水(電解質溶液)中でさびた銀に重ねてこすると、さびが取れる。
内容・文章化責任: 科教協静岡 長谷川静夫