5月12日(日)に、「ふじのくに地球環境史ミュージアム」(静岡市)の部屋をお借りして、科教協静岡の恒例の「研修交流会」を開きました。参加者は多くはなかったのですが、講演・講座ともに内容の濃い内容で、学ぶことが多い会になりました。
(1) 講演「教師も楽しい理科の授業」~環境や地震をどのように考えさせるか~
講師:上久保廣信氏(NPO「地下からのサイン測ろうかい」副代表、浜松市立中学校講師)
① 教育実践の紹介
「教師も楽しい授業は、生徒も楽しいと言う。教師が趣味(自分の関心)を持つことが大切。」という立場で、どのように中学校教師として生きてきたのかを話されました。授業では、ノートに書かせることを重視し、ノートの(縦長で)横の2/3は授業の記録、横に並べて1/3はメモ欄で自分で考えたこと等を書く欄にするのが大切とのことでした。
詳しい内容は<別に掲載の「講演の記録」>を見てください。
② 南海トラフ地震の今
南海トラフ地震の歴史的発生間隔や、隆起量と発生間隔から、何が言えるか。発生時期の正確な予測はできない。地震について、正しい知識を持って怖がることが大切というお話でした。
詳しい内容は、同様の報告をしていただいた「静岡理科の会」(2024.2.3)の記録を見てください。
(2) 研修交流会小学校講座
① 中学年「課題方式の授業づくり~4年生の授業映像の視聴から~」紹介:野末淳さん(科教協埼玉支部)
「課題」を出して「自分の考え」をノートに書かせて発言させる「課題方式の授業」について、その授業の進め方が紹介されました。また、4年生の「水のすがた」の中の1時間分の授業映像で、子どもたちの生き生きとした活動がよく分かりました。
詳しい内容は<別に掲載の記事>を見てください。
② 高学年「子どもにとってワクワクするようなストーリー性のある単元デザイン」紹介:鈴木拓実さん(理科サークル「SCIENTIA」)
6年生の「土地のつくりと変化」の単元で、地域の地層を活用した実践の紹介です。子どもたちのアンテナに引っかかりにくい内容を、地元の「横臥褶曲断層」(島田市神尾)という特別な地層を活用して、興味を持って学習に向かわせることができると考えたとのことでした。
また、傘袋を使った地層モデル作りでは、観察がしやすい、より迫力のある地層モデルができました。
詳しい内容は<別に掲載の記事>を見てください。
(3) 研修交流会中学校講座
① 中学校理科における化石を利用した授業事例集 紹介:田村響太郎さん
サメの歯を見せて「これは何の化石?」と問うところから始まる授業、恐竜を題材にした授業、化石の発掘体験をもとにした古環境の復元の授業など、いくつかの取り組みと今後の希望も紹介されました。また、化石の入手先も提供されました。
詳しい内容は<別に掲載の記事>を見てください。
② 高草山の成り立ち ~教科書の世界が実は身近で起きていたと実感できる「大地の変化」の話~
紹介:杉本寛さん
地元の教材で授業ができないかと考え、噴火のしくみや火成岩、鉱物を学んだ後に、高草山がどのようにできたかを学習したとのことでした。ジグソー法を使って学習を進め、生徒はよく調べて、結論にたどり着きました。また、火山の噴火のモデルで、身近で準備できるものでする実験方法を紹介されました。
詳しい内容は<別に掲載の記事>を見てください。
③ いくつかの新しい理科の実践 紹介:高橋政宏さん
・夏至・冬至・春分・秋分における、多地点同時観測の太陽日周運動記録半球
北海道・静岡・岡山・沖縄の4地点で、冬至・夏至・秋分の太陽の日周運動を同時観測し、作成した透明半球を紹介されました。同地点の時期による比較や、同時期の地点による比較ができるため、学びが深まるでしょう。 → <詳しい内容の記事> 透明半球記録の複製方法 → <詳しい内容の記事>
・ドローンを用いた上空の気象観測
雲の発生についての学習で、地上と上空の気象条件の違いについて調べる必要があります。大型ドローンにデータロガーを装着して、上空のデータを計測する実践が紹介されました。大型ドローンを飛ばすには資格や申請が必要で、今回は地域の方に協力をいただいたとのことでした。
詳しい内容は<別に掲載の記事>を見てください。
・生成AIでつくる授業
生成AIを、授業づくりにおいてどのように活用できるか、紹介されました。
質問のコツは、「目的を説明する」「場面と役割を設定する」「回答の表現や出力方法を伝える」の3つです。活用方法は、授業中の発問に対しての予想される答えを返答させたり、授業案を表の形式で生成させるです。
詳しい内容は<別に掲載の記事>を見てください。
(4) 研修交流会の参加者のアンケートから
○ 理科を学ぶことも教えることも楽しんでいる先生のお話をうかがうことは、私にとって良い栄養剤になっています。時間に追われ、授業をなかなか楽しめなくなっている現状ですが、やっぱり水中の微生物を発見したときなどの生徒のキラキラした目は、私にとって本当にうれしいものなのでこれからも”楽しむこと””学び続けること”を大切にしていきたいと思います。今日はありがとうございました。
○ 大変勉強になりました。今後の実践に生かしていきたいと思います。午後の発表では、発表だけでなく交流の時間もたくさんあり、充実した時間を過ごすことができました。
○ 発表者の実践を聞くと、教材に向き合う姿勢がすごいなといつも感心します。とにかく楽しく有意義なものにしたいと思えばすぐに行動が起こる。どんどん人とのつながりを作る。その行動力にいつも圧倒されています。でも時間がない。その辺をどうカバーしているかなども次にはお聞きしたいです。
第15回「研修交流会」の行事の詳細 → 行事の案内ちらし
担当:科教協静岡 長谷川静夫(skrc@sf.tokai.or.jp)