(1) 粉末の吸水ポリマーに水を加える実験
・吸水ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム)は、簡易トイレや紙おむつに使われ、水を多量に吸収する。保冷剤や芳香剤としても使われている身近な物質。
・図1のものを用意し、粉末の吸水ポリマーに水を加えながらかき混ぜていくと、図2のように粉末だったものが膨張しベタベタの物質になって、固まって逆さにしても落ちなくなる。水が吸水ポリマーの分子構造の中に入り込んだ。
・固まった吸水ポリマーに、塩(塩化ナトリウム)を少量パラパラと振りかけかき混ぜていると、図3のような液体状になる。 吸水ポリマーの構造の中の水が外に出てきた。
・吸水ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム)の構造と吸水の仕組み(原理)
ポリアクリル酸ナトリウムは非常に長い網目状の分子。水に入れると水がしみ込んだ分子内でナトリウムイオンが分離(電離)し、分子内の濃度が高くなるため、 浸透圧で分子構造の中に水が入り込む。塩をかけると外の塩が溶けた水の濃度が高くなるため、浸透圧で分子構造から水が出てくる。
(2) 水を吸ったプランツボールで、冷えひえパックを作る
・「プランツボール」は、 吸水ポリマーが水を含んでゼリー状になった球体で、 アクアボールなどの名称で、100円ショップで販売している。植物栽培の水分補給用(植物栽培用高分子吸水球)の商品。
・プランツボールは、水を含んでいないときは2~3mmの硬いビーズ状の球で、4時間以上水に入れておくと、水を吸って直径10~15mmのゼリー状の球体になる。プランツボールは押しても水は出ないが、水から出しておくと水がどんどん蒸発して、また小さな粒にもどる。
・物質が水に溶けるとき、温度が下がったり(吸熱反応)、上がったり(発熱反応)が起こる。
例えば、水30mLに、砂糖、クエン酸、尿素をそれぞれ10gずつ溶かして温度変化を見ると、これらは
全て吸熱反応だが、 尿素が特に温度が下がるので、 尿素(肥料用として販売)を使って冷えひえパックを作る。
・チャック付ポリ袋に、プランツボール(上の写真は色付きのもの)を15個ぐらい入れて、尿素40gも入れ混ぜ合わせる。様子を見ながら、温度変化も調べる。
・プランツボールに尿素がつくと、尿素がプランツボールのまわりについている水に溶け、その濃い水滴に浸透圧でプランツボールから水が出て、さらに尿素を溶かす。その尿素が溶けるときに温度が下がる。尿素の粉末(固体)が溶けている間、温度は下がり続ける。
・プランツボールは、水を含んだプラスチックなので、使い終わった後に流しやトイレに捨てないこと。放置して乾燥させるなどして、各地域のごみ処理の方法に沿って捨てること。
紹介:山口啓子 「静岡理科の会」(2023.2.26)で紹介された実践
参考:「みんなの実験室16」水を吸うプラスチック http://www2.tokai.or.jp/seed/seed/minna16.htm