(1) 小学校6年 土地のつくりと変化における横臥褶曲断層の教材化検討
静岡県島田市神尾(かみお)には、横臥褶曲(おおがしゅうきょく)断層という地層(図1、2)があります。そこで、この地層を教材として、単元を貫く課題を設定できないかと考えました。
まず、 小6 土地のつくりと変化では、
① 土地の縞模様から、土地の構成物(礫、砂、泥、火山灰など)の違いを捉える。
② 地層がどのようにしてできるのかを捉える(流れる水の働き、火山の働き)
③土地の変化について捉える(隆起、沈降、断層、褶曲など)
の3点について単元を通して学習していきます。
①~③について学習のきっかけになるような疑問を抱くのに、横臥褶曲断層の観察は極めて有効なのではないかと考えました。
そこで、 「神尾の地層はどのようにしてできたのだろう(仮)」というような単元を貫く課題を立て、土地のつくりと変化を学習していきたいと考えています。
例会での検討を通して、
・ 子どもにとって「なんで縞模様になるの」「どうやってできたの」など疑問を抱きやすいのではないか。
・ この地層を見れば、 子どもたちの力で単元を貫く課題を設定できそうだ。
・ 地層が岩石になってしまっているので、地層の構成物を粒として見ることは難しそうだ。
などのご意見をいただきました。
今後、本サークルの先生方の力で身近な場所にあるオススメの露頭を情報交換していけたらとも思います。
(理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№81から 執筆協力:鈴木)
(2) 地元の地層「神尾横臥褶曲断層」を活用した「土地のつくりと変化(小6)」の経過報告
小6「土地のつくりと変化」の単元において、静岡県島田市神尾にある横臥褶曲断層を用いて単元を貫く課題を設定しました。例会では、 その授業の経過報告をしました。
●神尾横臥褶曲断層を見た子どもの反応
単元の導入では、 子どもたちに教科書に紹介されている地層を拡大コピーして紹介しました。拡大コピーをみた子どもたちから、 「縞模様になっているよ」「島田市にも地層はあるのかな」など様々なつぶやきが聞こえてきたため、本単元で学んでいくことの見通しをもつための時間を設定しました。その後、神尾横臥褶曲断層の写真を見せると、 「ゴツゴツしていて岩みたい」や「あんまりきれいじゃないね」などほかの地層と比較して特徴を捉える姿が見られました。
●地層の見学
島田市「山の家」の近くにある地層と横臥褶曲断層の見学に6年生全員で行ってきました。地層に直接触れ、層によって手触りが違うことを感じたり、地層の一部を持ち帰り学校でもう一度よく観察したりする姿が見られました。地層見学の後、担任する学級の児童に「地層を見たことがあったか」と聞くと26人中わずか1人でした。 中学校では、 学年単位で地層観察に行くなどの校外学習を設定するのはなかなか厳しいと思うので、 小学校で実物の地層を見る経験をすることは大切であると感じました。 また、地層の見学場所に行く途中で、 バスの中から、 見学地とは別の地層を発見する子がいました。地元の地層を見るのと見ないのとでは学習への意欲にも大きく差が出ると改めて思いました。
●1枚ポートフォリオの活用
授業の振り返りでは、右図のような振り返りシートを活用しています。この振り返りシートを活用することで、子どもが単元を貫く課題を意識したり、単元終了後に自分の単元を通しての学びを振り返ることができます。本稿では、コラボノート※1にこの振り返りシートを作成し、クロームブックで振り返りを行っています。
※1 コラボノート (ダイワボウ情報システム株式会社)
https://www.sip.dis‐ex.jp/product_page4.html?id=77
(理科サークル「SCIENTIAのニュース 「Serendipity」№83から 執筆協力:鈴木)
● 実践を終えて
一枚ポー トフォ リオの記述から、子どものワクワクポイン トをまとめました。
ワクワクポイント① 初めは地層について“?”しかなかったけど、よく理解ができた!」
ワクワクポイント② 「本物の地層を見たり、実験で地層を再現したりして嬉しかった!」
ワクワクポイント③ 「5年生で習ったことと結びつけて考えられた!」
ワクワクポイント④ 「縞々に見える理由や地層のでき方を知れて嬉しかった!」
ワクワクポイント⑤ 「(地層は)長い時間をかけてできるということが分かった!」
ワクワクポイント①~⑤より、 本単元で子どもが 「学びたい・知りたい」 という知的好奇心を働かせて学んできたことが読み取れました。 自分が住んでいる島田市の地層について考えたことや本物の地層を見学したことで、 本単元の学びは子どもにとってワクワクするような学びになったのではないかと考えます。
例会では、 提案内容について様々なご意見をいただきました。 その一部を紹介します。
○ 地域の教材を活用することで、子どもの学びたいという気持ちが高まったのだろう。
○ 中学校では、地層を見学しに行く時間はなかなかないので、小学校で地層観察の経験をするのは大切なことだろう。
● 「時間的・空間的」な見方で考えるポイントがあると、さらに学びは深まりそう。
● 単元の最後に教師からで良いので、グーグルマップなどで観察した地層を俯瞰的に示したい。地層を点として見るだけでなく、大規模な地質構造の一部として見るようにすることで、子どもは学んだことにさらに感動することができるだろう。
(理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№87から 執筆協力:鈴木)
(3) 地層観察をしてみよう
小学校の授業で地層観測をしました。業務員さんに市のバスの借用と運転をお願いして、2時間かけて6年生を連れて行ってきました。
藤枝市にはおそらくいくつかの良い地層はあるはずです。皆さんで共有することでどの学校に行っても、すぐに見に行ける地層の情報が手に入るようになればいいと思います。
(理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№37から 執筆:髙橋)
問い合わせ先:高橋政宏(理科サークル「SCIENTIA」)
m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)
この記事は、「科教協静岡ニュース」№65(2022.11.18発行)に、「Serendipity」を引用して掲載。