静岡県の河川の砂
静岡県は,北アメリカプレート,ユーラシアプレート,フィリピン海プレートの3つのプレートの境界に位置する特別な場所です。河川の砂の特徴の違いを活かした,地学分野での活用を考えました。
今回は,静岡県を流れる河川のうち,東から狩野川(黄瀬川合流前の上流部),黄瀬川(狩野川合流直前),狩野川(河口部),富士川,安倍川,大井川,菊川,天竜川(富士川以西はすべて河口部)の計7河川8か所(図1,2)のサンプルを採取しました。
静岡県の河川の砂の磁性の比較
各河川の砂に,磁石を近づけてみます(強力なものの方が差が出ます)。すると,狩野川,黄瀬川,富士川の砂は強い磁性を示します。この結果と地理的特徴から,火山灰に鉄が含まれることがわかります。また,よく観察すると溶岩のような赤錆の色が見られます。
富士川の砂が強い磁性を示すのは,富士山の火山灰の影響と考えられます。狩野川は,狩野川水系最大の支流である黄瀬川が,富士山の噴火由来の三島溶岩流の上を流れているため,最も強い磁性を示します。黄瀬川合流よりも上流の狩野川の砂でも磁性を示すことから,伊豆火山群の由来の岩石の影響があることがわかります。
ちなみに,この狩野川は,太平洋に流れる日本の河川で唯一北上する川です。このことから,伊豆半島はどこから来たの?という疑問に繋げられるかもしれません。
狩野川の護岸整備
これらの河川のなかで,狩野川のみ護岸整備が進んでいます。これはかつての狩野川台風による甚大な被害によるものですが,富士山,伊豆火山群の両方の影響を受け,火山岩質の脆い地質であることが原因です。
本教材は,静岡県総合教育センターからヒントを得たものです。 (執筆:栃山)
報告者の栃山さんは,「Serendipity」№68で,この砂を用いて中学1年生の火山,地震単元を展開した実践を報告しています。その中で、「実際に単元を通してみて,川の砂から多くの情報を得ることができました。実際に身近な県内の河川の砂を使用したこと,富士山や東海地震といった,静岡県特有の話題であることが,生徒にとって自分事としてとらえやすい展開につながったと考えています。生徒たちにとって,川の砂といった身近なものに対する見方・考え方に刺激を与えられる教材,展開になったと思います。」と。
この記事は,理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№61から編集して転載しました。
問い合わせ先:「SCIENTA」 高橋政宏 m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)