3年ほど前に,テレビを見ていたらm&m'sチョコレートが水に溶けていく様子が流れていて,「これは使える!」と思いました。それまで,物質の溶け方を観察する際にコーヒーシュガーを使っていたのですが,色が薄くてわかりにくかったり,コーヒーシュガーが浮いてしまったりしていたからです(図1)。
一方,m&m'sチョコレートを使うと,色がきれいで,同心円状に広がる様子がはっきりとわかります(図2)。
例会で発表した際,着色料が溶けた後,内側のミルクの層が出てくるのが欠点だと感じていましたが,「ミルクも同じように広がることがわかっていい」との意見をいただきました。ミルクの層の内側にはチョコレートがあり,コーヒーシュガーのようには全て溶けませんが,撹拌しなくても同心円状に広がることを押さえる目的であれば効果的な教材であると考えます。
「溶解」の実践記録
教師 前回,溶けるとはどういうことかを学習した。
では,溶質は溶ける時,どのように広がるか。また,溶ける前と後で質量は変わるか。
生徒 ブワーと広がっていく。 円を描くように広がっていく。 水の波紋のように広がっていく。
教科書に, 円を描くように広がることを同心円状と書いてあるよ。
溶質は溶けてなくなっていくのだから質量は減るのではないか。
状態変化で,状態は変化しても質量は変わらないことを学習した。
教師 では,粒子モデル(図3)を使って溶ける様子を説明しよう。
生徒 粒が徐々に広がっていく。
溶ける前後で粒の数が変わらないので質量は変わらない。
※ここで,水の粒子の中に砂糖の粒子が入り込んで,砂糖水という粒子に変わると考える生徒がいた。
次時に,溶かした溶質を再びを取り出せるかの実験をして,検証した。
〜実験〜
生徒 同心円状に広がった。 質量は変わらなかった。 本当に混ぜなくても広がっていった。
教師 混ぜなくても広がったのはなぜ。
生徒 砂糖の粒子が動いているんだ。
補足
・「m&m'sチョコレート」は百均ショップで売っています。他の種類のメーブルチョコは、水に溶けませんでした。
・m&m'sチョコレートが水に溶ける様子は,画像検索するといろんな模様が見られます。
また,BeautyofScienceのサイトではどのようにm&m'sチョコレートが水に溶けていくのか,その様子をタイムラプス映像で紹介しています。とても美しいです。(https://www.beautyofscience.com/mm-dissolving)
・円のようにチョコレートを並べると図4のようになります。最初は色が分かれていても,徐々に色が混ざっていく様子が分かります。
・例会で,「冷水とお湯での溶け方の比較をすると,水分子の運動と拡散との関係が押さえられる」と助言をもらいました。水道水は約20℃でした。40℃ぐらいにすると約2倍の速さで溶けました。
追加1
現象が「きれいだ」で終わらないように、「水に溶かすと溶質がなくなる」といった誤解や、「水溶液は透明である」といった理解など、授業の本質を見抜くための視点を持たせることや単元構想を立てることが、これからの課題として挙げられました。(2023.6.27追記)
追加2
この現象を使って、中学1年の「水溶液」の単元の構成を考えました。 (2023.9.13追記)
「水溶液の指導を、m&m’sチョコレートを使って」
理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№65から転載
執筆:杉本寛(理科サークル「SCIENTA」)
問い合わせ先:「SCIENTIA」杉本寛 pero_hiroshi★hotmail.com(★を@に変えてください)