(1) 生命倫理と授業
理科は自然現象を見つめる教科です。ですから、自然節理の美しさとか、生命の尊さとか、そういう「道徳的」な感性を醸成するには優れた教科なのかもしれません。今回、アフリカツメガエルの解剖をしましたが、生物の体の構造の巧妙さに感動する一方で、命を奪う切なさも感じました。
『13歳からの研究倫理』(科学同人) では「生き物を扱う研究をするときには生命倫理的に守らなければならない約束がある」と書かれています。解剖実験は、子どもたちに「研究すること」と「命」を考えさせるよい機会なのかもしれません。心が育つ理科の授業を考えてみませんか? (執筆:髙橋)
参考:『13歳からの研究倫理』 大橋敦史著 科学同人発行(2016)
(2) アフリカツメガエルの解剖
中学2年生の授業で「動物のからだのつくり」を終えたばかりのときに、アフリカツメガエルを入手したので、解剖をしてみることにしました。
サークルの例会では、授業の報告をしながら、実際に解剖をしてみました。
【解剖の仕方】
① 麻酔をかける
水を張った水槽に麻酔薬(※)を入れ,15分ほどカエルをつけておく。つけすぎると死んでしまう可能性もある。
※ トリカインという麻酔薬を使用した。
② 外形観察
カエルの外形を観察する。
③ 上皮を切開する
解剖ばさみを用いて,下腹部からのど元にかけて,正中線を切開しする。その後手足にむかって切開する。(図1)
④ 内側の膜を切開する
正中線には静脈が通っているため,そこを外して切開する。
⑤ 内臓の観察(図2)
肝臓,消化管,肺,心臓を観察し,1つ1つをとりだして観察する。
⑥ 神経を観察
内臓をすべてとりだすと,神経が観察できる。(図3)ピンセットで刺激を与えると,筋肉が動くことも観察できる。また,1.5V乾電池を使用して,電気を通すと,筋肉の運動が激しくなることも観察できる。
会では、 ガルバーニの実験も行ってみました。金属接触による電気で筋肉が動きました。(執筆:髙橋)
(3) ブタの胎児の解剖
ブタの胎児は、ヒトと体のつくりが似ており、適度な大きさであるため、解剖に向いています。高等学校生物では、しばしば用いられる教材だそうです。押さえたい内容にもよりますが、中学校で行う場合、2時間続きの方がより丁寧に観察を行えるかもしれないと言います。
メリットは、
・すべてがつながっている臓器が見られる。
・入手しやすい。
・肺が小さいため、肺に空気を吹き込む実験もしやすい。
・頭蓋骨を割れば、脳などの神経系も見られる。
(紹介:藤原 執筆:高橋)
参考 ブタの胎児は、東京芝浦臓器(一体2,500円程度)で購入できる。
(余裕をもって事前予約が必要)
理科サークル「SCIENTIA」の例会で紹介された内容です。サークルニュース「Serendipity」を引用し編集しました。
「SCIENTIA」連絡先:髙橋政宏さん m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)