「いい授業のために、 気をつけたいこと」
禰津先生の体験談・経験談をもとに、理科の授業を運営するうえで、どんなことに意識を置いて授業をすべきか議論をしました。
・ 全員が満点取れるテス トをつくる意識を
教師は授業で扱った内容以上の物を、テストで生徒に試したがる悪い癖があります。 例えば、オームの法則の活用の問題では、なぜかAやmAを混ぜ込んでみたり、数字を小数にしてみたり、ハードルを上げます。 禰津先生は「生徒にできると思わせることも大事」といいます。 例会では「生徒に100点を取らせる問題をつくる気持ちで、テストをつくりたいものだ」という話になりました。
教師が生徒に序列をつけるためのテストという考えに縛られず、生徒のやる気を引き出すための重要なテストであることを意識したいものです。
・ なぜ30点の生徒はどの単元でも30点なのか
理科はいろいろな単元があります。生物単元と物理単元などは見た目にも、学習内容にも異なる要素が多いです。 しかし、30点を取る生徒はどのテストでも30点前後の点数になると禰津先生は言います。 単元における得意・不得意があってもいいはずなのに、考えてみればこれはかなり不思議な現象です。 我々教師は、30点の生徒を35点にしてあげようと、策を講じたいものです。
その5点UPのために、どのように授業を改善していくかを考えていくことは価値あることではないでしょうか。
・発問は「どうなると思いますか→○ なぜこうなるでしょう→△ ~してみよう→×」
発問の仕方は授業や単元によって、様々なバリエーションがあります。しかし、うまくいきやすい発問とうまくいきにくい発問があるのも事実です。 例えば「実験してみよう」という発問は、 得ものが少ないです。行動が目的になっているため、なぜその実験をしたのかわからない生徒が増えるからです。 また、「なぜこのようになったのでしょう」は検証できない事柄があり、水掛け論に陥る可能性があります。
例えば、「なぜ、葉の裏に気孔があるのでしょう」と問うと、さんざん話し合いをした挙句、「実はね‥」と教師が説明せざるを得なくなります。 「豆電球を2つにしたら明るさはどうなりますか」と問うと、実験で検証できる形になり、話し合いに決着がつきます。 実験の意味も出てきます。
・発問をじっくり練る
発問は、 教師の特権です。 授業のストーリーと目的に合わせてより良いものを練り上げるべきです。 そんな発問に沿った授業展開であれば、実験方法は教科書の内容と同じでも、授業は盛り上がります。 特に、若い先生方はまず、発問を考えることに時間をかけるとよいと思います。
「授業づくりの視点」
授業をつくるときに、様々なことを考えているわけですが、自分がどんなことにこだわって、何を優先して、どんなことに折り合いをつけて授業を作っているかは今まであまり、整理していなかったように感じます。 今回、例会で発表するにあたり、自分がどのように授業づくりをしているのかを整理し、まとめてみました。
図のカーリングの的のようなものの、中心ほど自分が優先して意識を置いている部分である。
● 目的は何か
「この授業で、これまでの何を活かして、どんなことを発見させるか」という視点で授業を考える。
● 何を考えさせるか
① 考える材料があるか ② 新たな発見が期待できるか ③ 思考の広がりが期待できるか ④ 検証が可能か が重要であると考える。
● 何を教えるか
生徒が欲していない時に教える、いわゆる「押し付け」は好ましくない。 しかし、生徒が欲しているときに「知識や思考を広げてやる」ことは、むしろ教師がせねばならないことである。 つまり、① 知りたい内容か ② 授業内容が活かされているか ③ 知識や思考の広がりが期待できるか が重要であると考える。
● 教材は何がいいか
教材は「考えさせる教材」と「思考を広げる教材」がある。「考えさせる教材」は実験結果の予想や解釈に広がりが持てるものが望ましい。 一方、「思考を広げる教材」はある程度はっきりとしてきた知識や概念を、より強固にするための物である。 実験結果の予想や解釈が困難なものをこちらに設定するとうまくいく。
● 発問をどうするか
発問は、① 生徒の疑問の代弁になっているか ② 視点は明確になっているか ③ 結論と結びつくか ④ 誤解なく伝わるか を意識したい。 生徒が言うか、教師が言うかの問題ではなく、「生徒が考えたい内容であるか否か」の問題と解釈したい。
● まとめをどうするか
目的における「新たな何かの発見」を簡潔にまとめたい。 授業を通して生徒たちから導き出されたものなので、できる限り「生徒の言葉」でまとめさせたい。 科学の言葉(原子や分子など)を使わせる機会にもしたい。
● ふりかえりをどうするか
ふりかえりは振り返る視点を与えて行わせたい。視点とは、① 授業で大切なこと・わかったことはなにか ② 自分の考えがどのように変化したか
の2点である。生徒が自分の思考の流れを再確認することが一番の目的である。
理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」No.39(3月例会)から引用して編集
問い合わせ先:高橋政宏 m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)