今回の研修交流会も、静岡市教育委員会の後援を受けることができました。 また、ふじのくに地球環境史ミュージアムと共催となったことで、ミュージアム研究員の山田和芳教授から展示室1を会場にして、短時間でしたが「地球環境史とは」というお話をしていただきました。
(1) 午前の全体会 (模擬授業+α)
後藤富治氏の「物の性質の特徴と意外なモノとの対決-対話形式の授業に挑戦」というテーマで、模擬授業を中心とした講座が開かれました。
講師の後藤富治氏は、理科教育アドバイザーで、過去に埼玉県公立中学、自由の森学園中・高校、立正大学に勤務した方で、 現在教科書会社の教育研究室に勤務。また、ネットで「サイエンスCAFEヒゲじい」を発信されています。
○ 内容は、今話題となっているアクティブ・ラーニングという授業手法に関わるものでした。 こうした授業方法は、子どもたちの主体的な取り組みや対話を重視するもののようで、私たちとしても以前から工夫され、取り組み例が積み重ねられていたもののようにも思われます。
ただ、その中で今回紹介された「ジグソー法」は、正式には「知識構成型ジグソー法」という名称のもののようです。(私は詳しく勉強をしていませんが)子どもたちが主体的に行動でき、また発言が得意でない子どもも巻き込んで行けるようには思います。 ただ、教師が課題設定や資料の提供に関わるとしても、最も重要なそのテーマで確認したいこと(まとめ)に最終場面でどのように関わるのでしょうか。
また、途中の資料については、子ども一人一人がどれかを学べば(知れば)良い、また結果を教えてもらえば良いということでは、すまないものもあるのではないでしょうか。
○ 講師の後藤さんが紹介された取り組みでは、別々の実験を分担して行いながら、結論を出すところではその全ての実験で再確認をしながら結論に導いています。 特に、実験に関しては重要なことでしょう。 また、「リレー発言式」授業の紹介もありました。
○ 参加者からは、「子どもたちが主体的に取り組めるように実験を分けたり、番号プレートを使ったりの工夫があり、授業でぜひ取り入れてみたいと思います。(小学校)」 「磁石については、子どもにとって知っていそうで知らない身近な物なので、興味を持ち学習に取り組めると思いました。(中学校)」 「問いがとても魅力的だった。教材も工夫されていて退屈せず終始受講することができた。先生方との交流で自分自身の知識不足を痛感した。(学生)」 等々の感想がありました。
午後の「授業づくり講座」は、小学校が2講座、中学校・高校で1講座が開かれ、講師から熱心に授業や実験、そしてその考え方の紹介がありました。
(2) 小学校3・4年講座 講師:佐久間徹さん、野末淳さん(科教協委員)
○ 3年生 「新しい勉強『理科』に興味津々。好奇心の塊的3年生たちの期待に応えるべく、学習の初めから、低学年とは違った具体的な内容と方法と展開を示して見せ、体験を深めよう!」
○ 4年生 金属の学習 ~自然科学の学習のスタートを金属で~
「みんなで話し合って決着が1時間でつく」という学習スタイル(到達目標・学習課題方式)を活用する。
○ 4年生 1日の気温の変化と天気では、「『空気は太陽の光だけでなく、むしろ地面によってあたためられる』という事実をもとに考えられるようになると、晴れの日の気温の変化を根拠を持って理解することができるようになる」
(3) 小学校5・6年講座 講師:小幡勝さん、丸山哲也さん(科教協委員)
○ 5年生 植物の繁殖では、「植物はいかにして仲間を増やしているのかという体系的な学習に」
動物の繁殖では、「動物の種族維持の仕組みがとらえられるように」 → (
関連記事)
○ 6年生 理科の授業を楽しく学びがいのあるものに
「多すぎる内容から精選しよう」「気体の学習は、6年生の基本中の基本」「
酸素は燃える気体ではない、燃える気体はブタンガスで」
光合成でのデンプンの検出を上手にする方法(
たたき染め加熱法)
(4) 中学校・高校講座 講師:「理科サークル「SCIENTIA」のみなさん
1) 光の授業 → (
関連記事)
① 3色LED(赤・青・緑)によってできる影の色(光の色の合成)
② コーナーキューブ(自転車反射板)で、光がまっすぐはね返ってくるわけ
③ 全反射~水が入った試験管内にチョークを入れると、真上からは見えなくなるわけ~(図)
④ 水が入った丸底フラスコを使って5分で火をつける
⑤ 車のサイドミラーは左右で曲率が違うのか?
2) こんな工夫で天体を分かりやすく → ( 関連記事)
① 太陽の見える方角・時刻
② 月の満ち欠け・時刻など
ペーパーでの平面図と、実際の3D(立体)の考えの中間をどう扱うかを追求して開発。
3) 意思決定を用いた理科授業 → (
関連記事)
① 金属の性質を鍋選びから考える(知っている≠興味がある ←自分ごとにして考えることで育む)
② 傘を持っていきますか?(空を見てどう判断するか)
③ 火山や地震の多いところは温泉が多く湧き出る(信じる?信じない?)
4) 拡散 → ( 関連記事)
① BB弾を電動マッサージ器で振動させる(分子運動のモデルとして)(図)
② 焦がした砂糖による拡散(短時間で拡散を見られる)
5) いろいろな実験
①
フジの花(豆の元、胚珠の観察)
② 竹串を刺したウレタンボール上のまち針(影の長さから地軸の傾きを考える)(図)
③ スケーラームーン(地球・月等の縮尺計算ソフト)
④ アナグリフ(赤青メガネで立体視できる)画像の活用
○ 参加者の感想から
「感動体験をたくさんさせたかったので、いろいろな具体例がわかってよかった。授業が楽しみになりました。」(小学校3・4年)
「昨年度、5年でアジの解剖をして精巣、卵巣をやったけれど、時期があることを知り実際に見られてよかったです。」(小学校5・6年)
「これまで苦手意識のあった光や天体が、創意ある教材で理解することができた。理科の面白さを再認識する1時間だった。」(中学校・高校)
今回の研修交流会の参加者は、講師も含めて数十名でした。学生さんや退職した方の参加もありました。 科教協静岡の行事に何回も参加してくださる方もあり、また、静岡県中部の公立、私立学校に案内ちらしを配った結果、少なくない新規の参加者もありました。 こうした期待に応える工夫をしていきたいと思います。 (文責:科教協静岡 長谷川静夫)