理科サークル「SCIENTIA」4月例会で、新規採用の方から「授業をどのように展開したらよいのか」という相談が出されて、 授業をするための心構えについて議論がされたということです。 こうした基本的なことを質問することも、そうした話し合いができる雰囲気も、たいへん良好なサークル活動をされていると感心しました。
身につけたい授業での心構え
〇 「授業開き」で押さえたいこと
① 理科室の使い方
中学の理科は理科室でやることが多いです。中学1年生には理科室の使い方をはじめに教えておく必要があります。 特に、安全面に関する注意はしっかりとしておきたいものです。 石神さんは「危険図」を用いて、理科室の使い方として誤っている部分を指摘させるということを実践されたそうです。
② 理科授業のルール
理科の授業はどのように進むのか、ノートはどのようにとるといいのか、どんなことを意識すると授業がよくなるのかを伝えたり、考えさせたりすることは大切です。 理科ならではの授業の意味をぜひとも生徒に理解させたいものです。
〇 授業をどのようにデザインするか
① 本腰を入れたい授業からの逆算
単元内で力を入れたい授業をまず考え、そこに到達するためにはどのような力を子供たちにつけさせたいかを考えながら単元計画を作ると作りやすく、 よい授業(単元)になりやすいです。「力を入れたい授業」は、はじめのうちは中心授業や公開授業のような「見せる授業」をさすことになるのかもしれません。
② 荒い指導案づくり
授業の目的と結論をメモし、その達成のためにどんな発問をし、どんなことを考えさせ、どんな実験をさせ、子どもにどんな記録を取らせ、 どんな板書をするか等を盛り込んだ「荒い指導案」は作っておきたいものです。「教えこぼし」を防ぐのにも大変有効です。
③ 授業内レディネス
小学校での既習(したはずの)事項がどこまで定着しているかを授業内の生徒のやり取りの中で確認することは、より良い授業づくりには不可欠です。 生徒の反応や表情・ノート記録を敏感に感じとりたいものです。
④ 授業記録
授業後に記録を取ると、次の授業を修正したり改善したりする資料になり、教師としての実力を伸ばすことができます。 しかし、日々の忙しい業務の中で授業をまとめることは容易ではありません。 石神さんは昨年度、デジカメで板書を撮影して記録を取るという工夫を続けられたようです。
ICTの活用に関して
市では徐々に学校のICT化を進めていくようです。 さっそく本年度は教師1人1台のタブレット脱着型のPCが導入され、数学と理科に関してはデジタル教科書が導入されます。 私たちはICTをどのように利用し、授業を作っていったらいいのでしょうか。
〇 ICTを有効活用するには
① 情報の共有化
顕微鏡での観察の場合など、生徒一人ひとり見ているものが異なっています。 中には目的のものではないものを見ている子もいます。見ているものの共有化を図るためには、デジカメやタブレッ トを用いて顕微鏡で見ているものを撮影し、 TVなどに投影するとよいです。そうすることで、間違った観察を大幅に減らせます。
② 教室内ではできない観察・実験
気体の粒子構造について生徒は「液体の時より粒子運動が激しくなった(粒ビュンビュン説)」か「液体の時より粒子が大きくなった(粒風船説)」と考えます。 しかし、教室ではなかなかその検証はできません。そこでDVD「動き回る粒」内の実験を見せ、生徒の討論に決着をつけます。 このように、実際にはできない、見れない実験・観察をさせるのにICTは適しています。
〈参考〉たのしい科学教育映画シリーズ【第1集】(全8巻/岩波映像株式会社)
https://www.iw-eizo.co.jp/sell/school/03/school03_007.html
③ 時間の短縮・確保
黒板に図を描く時間や、ホワイトボードを黒板に貼る時間など、授業にはできれば短縮したい時間が存在します。 ICT化によってそれらの時間が大幅に短縮されます。授業内で一番考えさせたいことに充分な時間を確保し、より良い授業を作り出すことができます。
④ 教材の豊富さ
授業に使えるアプリは日々開発され、優れたものが多いです。教師の意図にそった資料がものによっては無料で簡単に手に入れることができます。
〈使えるアプリなど〉
・「eDocReader」 https://www.nicnet.co.jp/system/edocreader.html
・「google Earth」 https://www.google.co.jp/intl/ja/earth/
・「星座表」 https://play.google.com/store/apps/details?id=com.escapistgames.starchart&hl=ja
〇 知っておきたいICTの弱点
① 子どもの記録がおろそかになる
ICTは資料提示には優れているが、提示で終わってしまうと子どものノートには残りません。 通り過ぎる情報では理解に結び付きにくいことを知っておきたいものです。見せたものをどのように記録させるかは教師の力量が問われます。
② 体験が減少する
すぐに実験・観察動画などが見られるのはとても良いことですが、体験を減らす危険性もあります。 実体験ほど理解を深めることはありません。自分たちでできることなのにICTに頼ると学習の定着からはかけ離れる危険性があります。 できることは実体験で!が大切です。
③ 教師が思うほど、 子供たちは驚かない
現在の子どもたちは映像慣れしており、ただ動画を見せるだけでは驚かないものです。 ICTを有効に使うには「見せ方」が必要です。 教師が見せるまでの問いかけや、授業の流れを工夫し「見どころを焦点化」させないと教育効果は薄いと考えていいと思います。
以上は、「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」No.28よりの転載です。
問い合わせ先:高橋政宏(理科サークル「SCIENTIA」)
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