【内容の目次】
(1) 商品名「チャッティー」で、気体反応の質量保存実験
(2) 商品名「真空ポンプ」で、大気圧の確認と減圧実験
(3) 商品名「炭酸抜けま栓」で、断熱膨張、雲の発生の実験
(4) 実験器具「ゴムピタ君」で、大気の大きさの実験
(1) 商品名「チャッティー」で、気体反応の質量保存実験
ペットボトル用の茶こし器(写真 220円前後)で、細かい穴のある写真の容器の中に薬品Aを入れキャップをした後、 薬品B(水溶液)を入れたペットボトルに装着してひっくり返すと、AとBの薬品が化学反応して気体が発生します。
手軽に実験でき、また入手しやすく安価です。これを紹介したのは、岩間滋さん(岩手)で「科教協ニュース(2014.12)」に掲載されました。
上の写真で、反応させる前と気体発生後に質量を測ると、全体は変化しないことがわかります(質量の保存)。 キャップを開けて気体を逃がして質量を測ると、減少がわかります。
薬品Aを石灰石(CaCO3)約1g(約0.01mol)、薬品Bを10%程度の希塩酸10~20mLにすると、完全に反応して二酸化炭素が発生します。 気体を逃がすと0.2g程度の変化がわかります。やや圧力が大きくなるので、耐圧性の炭酸飲料用のペットボトル(500mL用)を使います。
はかりは、0.1gまで測れるもの(上皿天秤可)が必要です。
他の薬品でもできる可能性はありますが、Aが粉末では容器の穴からBに落ちるので、工夫が必要でしょう。
この「チャッティー」は、本来はペットボトルの方に水(湯)と茶葉を入れて装着すると、口に茶葉が入らないでお茶が飲めるという製品です。
(2) 商品名「真空ポンプ」で、大気圧の確認と減圧実験
装置(真空ポンプ)の上の取っ手を上下するだけで容器内から空気が抜けます。ほんの数回だけ上下するだけでも、半分程度に減圧しました。 その後はやや大変ですが、数十回動かすことで真空に近い状態を作れます。
中に入れた鈴の音が聞こえなくなるとか、吸盤フック(大気圧で張り付く)が外からの大気圧が減り落ちてしまうなどの実験ができます。
写真の装置は、数十年前に購入したもので「AIRFRESH R-6852 真空キャップセット」(加藤産業KK製造) というものです。 食品の保存用や浅漬けに使うものです。ビンの口にかぶせる真空キャップがついていて、適当なビンが容器として使えて便利でしたが、最近は見かけません。
この装置を紹介されたのは、「きくがわ科学少年団」での高村紀久男さん(科学教育からくり研究室:掛川)の実践で、大道仮説実験「しゅぽしゅぽ」(小出雅之 NPO法人楽知ん研究所)を改作した授業書にありました。
「真空ポンプ」(スケーターKK、550円前後) のみは販売されています。 ただ、真空キャップに相当する部分が必要で、それは「タイト式真空ランチボックス」(大小有り、約850~1200円) についていて、 内部を減圧し腐敗を遅くするもののようですが、実験には使いにくいでしょう。真空保存容器もあるとは書いてありました。
また、「真空パック用バブル CLICCA」(税込2,138円) というものも見つけました。 真空ポンプと手近なポリ袋につけて内部を減圧する口の部分がセットになって、実験をするにはまだ使いやすいでしょう。
(3) 商品名「炭酸抜けま栓」で、断熱膨張、雲の発生の実験
「炭酸抜けま栓」(東急ハンズ 税別490円) は、耐圧性のペットボトルなどに装着して、上部のポンプの部分を指で十数回押して容器に空気を押し込みます。 レバーを使って開け、空気を逃がすと断熱膨張がおこります。写真左の中央の霧吹き(化粧品用)で容器内に水を吹き付けておくと、雲の発生が見られます。
写真右のように液晶式温度計を入れておけば、温度変化(あまりすばやい変化ではない)もわかります。
この商品は、飲みかけの炭酸飲料から二酸化炭素が抜けないようにするためのものです。 「ワインキーパー」(税別800円) も、ワインビン用ですが同様なものです。
[追記]「加圧式霧吹き」で、空気の質量調べや断熱膨張の実験を(「科教協ニュース」2022年4月号)
100円ショップ等で購入できる「加圧式霧吹き」は手軽に入手でき、ペットボトルが装着できるので簡単に高い圧力で実験ができると提案されています。高松諭志さん(北海道)の紹介です。
(4) 実験器具「ゴムピタ君」で、大気圧の大きさの実験
ホームセンターで売っているゴム板(写真左の手前のものは、厚さ3mm程度、大きさは例えば15cm四方)に、鍋のふたを付けるか、 取っ手になる金具を接着剤で止めたものです。(手前左側はラベルを貼って顔のようにした遊びです)
写真のように、滑らかな板のいすに置いて取っ手を持ち上げると、いすごと持ち上げることが十分できます。 生徒用机を持ち上げることも可能です。ゴムと表面がなめらかな板との間の空気が少なければ、外からの大気圧でゴム板が板に押しつけられているためです。
1気圧は約1[kg分の力/cm2]で、15×15=225cm2では、計算上は約225kg分の重力に相当する大気の力(約2×103ニュートン)が加わっていることになります。
ゴム板と下の板とのすき間から空気が入り込み、それほどのものを持ち上げることは不可能ですが、状況が良いと十数kg程度のものまで持ち上げることはできます。
滑らかな板の上に置いてみると、横には簡単に動くけれど上には持ち上がらないことも驚きになります。
これは、科教協(埼玉)の石井登志夫さんが開発したものです。「科教協」全国研究大会の「科学お楽しみ広場」で知りました。また、今では理科教材会社でも販売をしています。
[追記]「ジョイントマット」でつくる大気圧体感実験器(「科教協ニュース」2023年5月号)
上記のゴム板の代わりに、100円ショップ等でも購入できる、パズルのようにつなぎ合わせて使う床用マットの「ジョイントマット」「パズルマット」で、つくることができると提案されています。天野拡昭さん(神奈川)と岩間滋さん(岩手)の紹介です。
以上は、3月の「静岡理科の会」で紹介した内容です。
長谷川静夫(科教協静岡) skrc@sf.tokai.or.jp