火成岩中の鉱物を火山灰から見つける実習 ― きれいな鉱物が簡単に見られる「わんがけ法」
(1)火成岩中の鉱物は火山灰で観察
① 火山灰で観察をする訳
火成岩の鉱物の本来の形(自形)を見るには、火山灰中の鉱物を観察するのが適切です。 ただし、噴火して期間が経っている火山灰は、特に雲母や長石が風化して変化し泥になっているため、その泥分を洗い流す(わんがけ法)必要があります。
② 実習で使う火山灰 ― 赤土を使う
火山灰は噴火しているところ(火山の裾野)から取ってくることができますが、気軽に行けるとは限りません。 また、暗灰色から黒い火山灰は玄武岩質のものが多く、ほとんどが有色鉱物(黒っぽい鉱物)や磁鉄鉱で、見てもややおもしろくないことがあります。
ローム層という地層は、昔に降り積もった火山灰からできたもので、それを採集してくるのが良いでしょう。 また、園芸品店で販売している「鹿沼土」(赤城火山の噴出物)、「赤土」(主として関東ローム層産で、富士山、箱根山や他に関東周辺の火山灰起源)は、 便利なだけでなく、有色鉱物の他に無色鉱物も含まれていて、見るだけでも楽しいものです。
尚、「赤玉土」はつぶれにくい粒子が含まれ見にくいので、下記③でふるい分けをした方が良いでしょう。 また、「硬質赤玉土」は吸水性がなくて、事前につぶしておかないと使えません。 さらに、校庭に赤土を入れて整備をしている場合は、その赤土も火山灰起源です。
(2)火山灰のわんがけ法
① わんがけ(火山灰の鉱物の洗い出し)
蒸発皿(①ではお椀やプリンカップでも可)に、薬さじ1杯分の試料を入れ、それがかぶる水を入れて、土の塊を親指でつぶす。 その後水を8分目程度にしてかき回す。やや(数秒)静置し鉱物を流してしまわないように気をつけながら、静かにバケツなど(泥が詰まる流しでは不可)ににごり水を捨てる。 また水を入れてかき回す、これを水がにごらなくなるまで(10回程度)繰り返す。
次は、③に進んでも可。
蒸発皿(加熱可能な容器)に希塩酸(5~10%)を試料が浸る程度に加え、ガラス棒でかき混ぜながら弱火で約5分程度加熱する。 バーナーでも良いが、火力が強くないホットプレートなどでも良い(液が突沸しないように注意する。液が黄色くなってきたら加熱をやめる)。 容器が熱いので気をつける。液が冷めてから水を加え、数回水洗いをする。
③ 鉱物の乾燥
水を捨て、蒸発皿(水がなくても加熱可能な容器)ごと弱火で加熱し、乾燥させる(鉱物が飛び散るので、初め水を良く切っておく。また、紙をかぶせても良い)。 乾燥したらそのまま放置して冷ます。このような加熱が難しい場合は、ろ紙などの上やそのままで乾燥を待つことも可能。
この試料の中には、鉱物でない岩片(微少な石)や、本来は流れたはずの非常に細かい泥の粒子も残っている場合があり、やや観察の時にじゃまになる。 極小のます目が0.1mm程度のふるいと0.3~1mm程度(火山灰中の鉱物の種類によって決める)のふるいを重ねて、 その上から試料を入れ良くふるって、2つのふるいの間にたまった鉱物を観察に使うと大変良い。
実習時間が十分取れないときは、実習前にふるいで大きめの岩片と細かい泥は取り除いておくと、ずいぶん見やすいものになる。
つぶした赤玉土と顕微鏡観察シートの様子
④ 鉱物の観察
シート(OHPシートのような透明なものが便利)か、ペトリ皿(シャーレ)に処理のすんだ試料のひとつまみ(少量)を、鉱物が重ならないようにまばらにばらまく。 シートや容器の下から磁石を動かすと、ともに動く磁鉄鉱の存在がわかる(動かして取り分けることも可能)。 透明シートを使用すると、鉱物をセロテープで固定して観察することができるし、また、自分のノートに貼り付けておくこともできる。
このシートを顕微鏡で観察するときは、セロテープを貼っていない側を上にすると見やすい。
鉱物を見るのにはルーペでも不可能ではないが、小さくて見にくい。 双眼実体顕微鏡か解剖顕微鏡があれば、20倍ぐらいで鉱物が良く見られる。
尚、わんがけをして残った鉱物は回収し保管しておくと、次回以降の実習でも使用できる。 また、わんがけ前の火山灰と混ぜると、わんがけの回数が少なくでき、やや実習時間の短縮にもなる。
この実践は「静岡理科の会」9月例会で紹介をしました。参加した方に、火山灰を配布しました。
連絡先 科教協静岡 長谷川静夫 skrc@sf.tokai.or.jp