科教協静岡「冬の研修交流会」での島田市櫻井和好さんの講演
櫻井和好さんは元高校理科教員で、また、サッカー指導者としても活躍されました。
櫻井さんは原子力発電に関する講演を、各地で数十回も開いておられるとのことです。 今回、「東日本大震災と浜岡原発」というテーマで、およそ1時間30分の講演をしていただきました。
言うまでもなく、福島第一原発事故による放射能汚染は、静岡県でも例外ではなかったし、アメリカからヨーロッパでも福島の原子炉からの放射性物質が観測され、 また、海洋汚染も深刻な状況です。 それをもたらした、地震と津波について、東海・南海の3連動地震のことも含めたお話しは、わかりやすくたいへん参考になりました。
静岡県の浜岡原発が改めて問題になっています。 浜岡原発は、東海地震の想定震源域の真上にあり、また原子炉5号機は軟弱な地盤上にある、冷却配管が通る原子炉建屋とタービン建屋の間にも断層が走っているなど、 危険が言われていました。
それに加えて、
御前崎周辺の4段の海岸段丘の地形とボーリング調査の結果、 この段丘を形成する大きな隆起が、7000年間に4~5回発生したと推定された。 (放射性炭素年代測定によると、5000~4800年前、4000~3800年前、2400年前頃、その他に、1000年前前後にもあった)
御前崎周辺は、宝永地震(1707年)と安政東海地震(1854年)でおよそ1m前後隆起したが、この隆起の痕跡は地形としてほとんど残っていない。 それは、地震と地震の間の沈降で相殺されたと考えられる。
したがって、100~200年周期の歴史時代の海溝型大地震(東海地震や南海地震)とは異なる、 千年程度の周期で大きな隆起を伴う地震(超巨大地震とは限らない)の存在が浮かび上がった。
その地震の機構はまだ分かっていないが、海溝(南海トラフ)のプレート境界の断層から枝分かれして陸地に向かう分岐断層による隆起とも考えられる。 また、この分岐断層が、海溝型地震の何回かに一度の割合でつきあって起こるとも考えられる。 (「御前崎周辺の地形と地層が示す隆起現象」藤原治 産業技術総合研究所 2007:Webに有る)
とすると、次の東海地震や南海地震が連動し、さらに連動してこの千年周期の大きな隆起を伴う地震も起こる可能性があります。
津波は波長が10kmにもなるもので、例えば津波の高さ(波高)が8mでは、 8m×数kmもの水の塊が押し寄せてくると考えると良い。 また、海底が浅くなると海底との摩擦でスピードが下がり、波がつまってエネルギーが集まり、波は盛り上がる。
津波は陸地に達すると、2.5倍~3倍の高さ(遡上高)を這い上がる。 波高8mとして、8m×3=24mにも達し得る。福島第1原発を襲った津波は5~6mだったが、上陸後には15mになった。
とすると、10~15mの砂丘があっても、その後に15m程度の防波壁を作ったとしても、津波の侵入を防げるかどうかは、甚だ心もとないと思われます。
電力不足の問題で、櫻井さんは原発なしでも、中部電力管内で不足することはないと言います。
中部電力によると、供給電力の内、浜岡原発の電力は1割程度(図1)、 図中の他者受電は、電源開発(株)からの提供が大きく、電源開発にはまだ余力がある。
そもそも、原子力発電所では常に最大能力に近い運転をしているが、 その他の発電所ではかなり低い稼働率となっている(図2)。 原子力発電所では、運転中のON・OFFや運転能力の調整・変化をさせにくいしくみで、定期検査以外では昼夜に渡って一定の発電を続けるしかないため。
その結果、水力や火力等は、需要に合わせて調整するため稼働率が低くなる。
中部電力管内では、節電もあってこの夏の需要のピークに対して、この夏の供給力は700万kW(20%)もの余裕があった。 また、過去最大の需要のピークに対しても余裕がある。 さらに、電源開発(株)の発電力にもかなり余裕がある状況で、原発を動かさなくても十分に供給できることがわかった。(図3)
とすると、10万年も保管しなければならない放射性廃棄物を、これからも増やし続けること、 地震動や津波での破壊の危険もある危険な原子炉を動かすかことの善し悪しは明かです。
櫻井和好さんは、現在「浜岡原発永久停止訴訟第二次原告団」の事務局長もされています。
文責:長谷川静夫(科教協静岡)