今年の全国大会は宇都宮大学を会場にして開催されました。テーマは「自然科学を国民のものに ― 教師も子どもも夢中になる!楽しくわかる理科授業 !!」です。 大会の参加者は500名弱、科学お楽しみ広場には、写真にもあるように、さらに子どもたちや保護者など500名余が参加したとのことです。 全国会員が決して多くない栃木支部が、広く呼びかけた研究集会・お楽しみ広場の開催や研修を含めた準備会を経て、大会を成功させました。
科学お楽しみ広場では、各地のサークルや個人から50近くのブース、出版社や実験教材等の業者から20近くのブースの出展があり、 さまざまな実験や教材の紹介や販売等がありました。 会場の体育館は、暑い最中にさらに熱気にあふれていました。
各ブースでは、実際に実験を見て詳しく聞いて、アイデアに納得したり、教材を購入したりできました。 業者からの資料の配布を受けたり、書籍・おもちゃの購入もできました。 中には、全日本錦鯉振興会から、ニシキゴイの展示、子鯉の配布と飼育法の紹介もあり、驚きました。
9分科会、さらに分散会ごとに1日半の日程で報告や議論がありました。 初めての参加者の悩みを含むものや、経験豊富な先輩のもの、生徒の発言を細かく追ったもの、実験の紹介等々。 すぐ役立つもの、考えさせられるものなどが多くありました。
全体会の記念講演「奥日光におけるシカの増加と森林生態系への影響」小金沢正昭さん(宇都宮大学農学部)は、興味深いものでした。
栃木県内の大型哺乳類の調査を続けて、奥日光の森林生態系がどう変わってきたかの報告です。 シカが1990年代以降急激に増加し生息地が拡大したのは、やはり暖冬による越冬地での死亡率の低下が第一とのこと。 農林業被害が顕著だが、採食や踏みつけで草花が激減、樹皮剥ぎで樹木の衰退が起こり、他方シカが食べない植物の増加など、景観が大きく変わる。
さらに、植物の変化で蝶などの昆虫の激減、またカモシカやノウサギの減少なども起こり、影響は森林生態系全体に及んでいるようです。
この問題の解決には、原因を解明しひとつひとつ取り組むしかないが、大局的には地球温暖化の防止や森林管理、同様に困難もある狩猟や防護柵等、 また捕食者の復活も課題の1つとのこと。明治時代に絶滅したオオカミを日本の生態系に再導入するという提案。 とんでもないことにも思えますが、ドイツの里山では人間とかなり近くで共存し、その群れのテリトリーの大きさからは、
奥日光で十分いくつもの群れが生存できる面積があるとのこと。 ドイツでは人が襲われることはないが、家畜を守る手立ては必要とのことでした。(参考HP「日本オオカミ協会」) 全体として、環境問題の「自然と人間」の単元でも活用できるテーマと思いました。
今回は、全体会での基調提案でも、また分科会やナイター等でも、東日本大震災や福島原発事故の問題が取り上げられました。 私たちも学ばなければと思いました。
科教協静岡 長谷川静夫