科教協静岡「研修交流会」(2011.3.26) で、静岡科学館「る・く・る」の鈴木芳徳さんが話してくださった内容と、「NPO法人 富士の国・学校ビオトープ」の観察シートから、「セミのぬけがらを調べて、街の環境を考える」を紹介します。 【関連】 「科教協静岡」第3回「研修交流会」
セミは種類ごとに、幼虫の時期をすごす環境(地面のしめりぐあいや、生えている木の種類など)の好みが分かれるようだ。 学校や公園などの一定の環境ごとに、ぬけがらの種類と数の割合を調べると、場所ごとの環境の様子が、長期間の定点観測は環境の変化を知る手立てになる。
セミのぬけがらならば、虫に触れることができない子どもでも比較的抵抗が少ないし、生きていないので生態系にも影響しないし、 また、大勢で取り組むことができる活動だ。夏(8月~9月)のある日に、ある場所を区切って、ざっとでも良いのでぬけがらを集め、種類ごとの数を調べてみませんか。
※ 「チャドクガ」に注意! 幼虫も、成虫も、ぬけがらにも多量の毒毛があり、触れるとかぶれやひどいかゆみが長引くので、 見つけたら近付かないこと! ツバキ類の葉についている。
A:クマゼミ (鳴き声はシャアシャア…、羽は透明)
見分け方の特徴は、ぬけがらは大きく、2.6~3cm以上ある。腹部は、こげ茶、薄茶、白の3色のしま模様がある。 中脚・後脚の付け根の真ん中辺りに、出べそのように目立つ突起がある。
明るく開けたグラウンドの植え込みや並木など、日当たりが良く、かたく乾きがちな地面を好む様子。 平野部に多いセミで、もとは静岡より西の、暖かな地方に分布していたが、近年静岡の市街地でも多く見られ、関東など東日本にも広がってきている。 都市化や気候変動の影響ではないかとも考えられているので、割合の変化は研究課題に。
B:アブラゼミ (鳴き声はジリジリジリ…、羽は茶色)
見分け方の特徴は、ぬけがらは2.5~3cmほど、つやつやした茶色で、普通ほとんど土が付いていない。 背中の節のつぎめに、黒い縁取りがある。お腹のしまは、こげ茶と薄茶の2色。
林の中のように、やや湿った地面を好む様子。公園などの中でも、樹木がたくさん生えていて、地表に直接日が差さない様な場所でたくさん見つかっている。 北海道から九州まで、日本の平野部を代表するセミで、静岡の市街地でも、毎年一番数多く見つかっている。
鳴き声が油を煮ているように聞こえるのが名前の由来。
C:ニイニイゼミ (鳴き声はチ~~チ~~、成虫の羽は灰色のまだら模様)
大きさは2cmほど。ぬけがら全体に、薄く泥が付いている。小さくて丸っぽいぬけがら。
乾燥した林などを好み、平地や市街地で良く見られたが、近年、街中では減ってきている。 夏の早い時期に、地面に近いところで羽化するため、見落とされがちなのかもしれない。
D:ツクツクボウシ (鳴き声はオーシツクツク…、成虫の羽は透明)
大きさは2.5cmほど。ぬけがらは、全体につやがなく薄茶色で、体の厚みもなく腹部の付け根がややくびれていてきゃしゃな印象。
平地や低い山の林などに見られるので、木の多い公園などでわずかに見つかる。夏の後半にかけて羽化する。
E:ヒグラシ (鳴き声はカナカナカナ…)
大きさは2.4cm以下。ぬけがらは、全体に薄茶色で、表面につやがある。腹部のしま模様は余り目立たない。ツクツクボウシと比べると、腹部が幅広い印象。
低い山地の杉・ひのき林などに多いセミで、暗く湿った林地を好む。
F:ミンミンゼミ (鳴き声はミーンミンミンミン~)
ぬけがらはアブラゼミに似ていて、区別しにくい。互いの触角を良く見ると、アブラゼミの触角は毛が多いが、ミンミンゼミの触角は毛が少ない等。
低い山地の林などに多くて、静岡の市街地では余り出会えない。
(注)樹種とセミの種類との関連はまだ未検証。
G:「静岡のセミ ぬけがら調べ2010 結果一覧」(静岡科学館「る・く・る」の資料=一部略) から
数年の傾向がほぼ一致する割合になっているが、同じエリアでも、調査場所が変わると結果にいくらか変化が出ている。 しかし、木々がまばらで地面が乾きがちなところではクマゼミが多くなり、逆に日陰が多い境内などではアブラゼミが多いという傾向は見て取れる。
・森下公園 8/20実施(採集数726) アブラゼミ 57%、クマゼミ 43% (今回は南東側)
2009年 9/12実施(採集数925) アブラゼミ 67%、クマゼミ 33% (公園全体)
・田町公園 8/13実施(採集数277) アブラゼミ 58%、クマゼミ 42%
2009年 8/17実施(採集数167) アブラゼミ 63%、クマゼミ 37%
・田町小学校 8/12実施(採集数126) アブラゼミ 69%、クマゼミ 31% (今回は植込み)
2009年 8/18実施(採集数1,605) アブラゼミ 59%、クマゼミ 41% (校庭の全体)
・駿府公園 8/19実施(採集数1,594) アブラゼミ 54%、クマゼミ 46% (親水広場周辺)
・熊野神社 8/24実施(採集数495) アブラゼミ 75%、クマゼミ 25% (木々がよく茂る)
・小鹿児童遊園 8/19実施(採集数292) アブラゼミ 25%、クマゼミ 74%、ニイニイゼミ 1%
2009年 8/21実施(採集数378) アブラゼミ 32%、クマゼミ 67%、ニイニイゼミ 1%
文責:長谷川静夫(科教協静岡)