科教協静岡「研修交流会」(2011.3.26) で、静岡科学館「る・く・る」の鈴木芳徳さんが話してくださった内容から、 「タンポポを花で見わけ、地域の環境を知る」を紹介します。
鈴木さんの話に加えて、「NPO法人 富士の国・学校ビオトープ」の観察シート「花で見わけるポイント紹介 咲いているのはどのタンポポ?」と、「静岡科学館 る・く・る」の資料「タンポポ 雑種(ざっしゅ)のはなし」の内容からです。 【関連】 「科教協静岡」第3回「研修交流会」
タンポポは、環境のようすをはかるものさし(生物指標)として、40年ほど前から各地で、手軽な生きものしらべのテーマとして取り上げられてきた。
日本の在来種のタンポポで有名なのは「カントウタンポポ」だが、静岡県など東海地方では「トウカイタンポポ(ヒロハタンポポ)」。 ヨーロッパから入ってきたタンポポ(外来種)は、「セイヨウタンポポ」などだが、100年ほど前には国内で確認されている記録がある。 そして、外来種が在来種を押しのけて広がっているという言い方もあるが、それぞれの生育環境の違いで、そのように見える面もあるようだ。
そういう点でも自然環境の学習にむいている。
トウカイタンポポは、種子を作るのに他家受粉(他の花の花粉をめしべに受けないと受精しない)であるため、 周辺に仲間の株(群落)があり昆虫が花粉を運んでくれないと、増えることができない。 そのため、土地が荒れていちど株の数が減ったところでは復活しにくい。
夏にはいちど葉をなくして休み、他の花との競合をさけている。開花期も春のある時期のようで目立たないが、必ずしも数が減っているというわけではないようだ。
見分け方は、花の外周にある総苞片(そうほうへん)と呼ばれる内外二重のカバーの部分で、 内外の総苞片の長さが余り変わらず、それぞれの先端に角のような大きい三角形の出っ張りがあるのが特徴。(上の写真を参照)
静岡市内では、駿府公園内のマロニエ園の周辺にあるとのこと。上の写真は唐瀬の北側にある遊水池の土手で撮影(長谷川)。
外来種は、セイヨウタンポポとアカミタンポポの2種がある。 外来種は3倍体(体の細胞の染色体が普通の生物は2組ある2倍体だが、それが3組ある生物体)で、いくつかの倍数体の花粉をつくる。 しかし、種をつくるのにはその花粉は必要ない(受精の必要はない)ため、一株でも増えることができ、繁殖力が強い。
そのため、造成地などの開けたところにすぐに広がっていき、また、開花期も長くいつまでも見ることができるので、目立っている。
しかし、夏にも葉があるため、周りに背の高い草が増えると、日光とり競争に負けてしまうので、どこでも他を圧倒して増えてしまうわけではない。
見分け方は、花の外周にある総苞片の外側の部分が、下向きにそり返っているのが特徴。(上の写真=長谷川撮影を参照)
近年の調査によると、外来種と在来種の間で雑種が生まれて広がり、中にはこうした雑種が大部分を占めるようになった地域もあるらしい。 雑種のタンポポは、在来種と外来種との両方の性質を備えているため、様々な環境に合わせてくらし、数を増やしているようである。
この雑種タンポポは、見わけるのが難しい。 外側の総苞片が外来種のように下向きにそり返らないで、横を向いたり中にはトウカイタンポポ(在来種)と同じように上向きだったりする。 区別には、DNA解析が一番だが、簡単にはできない。
とりあえずの方法としては、花粉をとり顕微鏡にて60~100倍で観察をすると、受粉が必要なトウカイタンポポは粒のそろった花粉が見えるが、 受粉なしでも増える外来種や雑種は花粉がなかったり、花粉の大きさがばらばらで不ぞろいであることからわかる。
文責:長谷川静夫(科教協静岡)