環境省の「生態系被害防止外来種リスト」に載っている植物に、身近でよく見かけるものがあります。このリストには、分布の拡大・拡散で生態系と生物の多様性に被害や影響を与える外来種や国内移入種が掲載されています。園芸用として移入されるなどして、その強い生命力のため環境で増えて、在来種に影響を与えるなどしています。 (科教協静岡 長谷川静夫)
(1) ランタナ
ブラジルなどのアメリカ大陸に生息する熱帯性の低木で、温帯の日本では冬に枯れてしまうこともあります。いくつもの種類があり、花の色はオレンジやピンクなどカラフルで5月~10月頃の長い間咲いています。咲いている間に花の色が変化して、和名は「七変化(シチヘンゲ)」。色素の種類と量が変わるためらしいです。かわいらしい花で園芸種としても栽培されていますが、十分な管理が必要です。
まず、繁殖力が強く「世界の侵略的外来種ワースト100」に入り、特に熱帯では急激に繁殖します。静岡の住宅地でも、道路のアスファルトや塀との隙間、荒れた花壇に生えているのを見かけます。また、種や実には「ランタニン」という毒があるため、誤って口に入れると嘔吐や腹痛を起こすと言われています。
(2) ヒメツルソバ
ヒマラヤ原産で、山岳地帯の植物であり、つるが岩や石にからまり、過酷な環境で生育できます。グラウンドカバー用の園芸種などとして栽培されています。花は5月~9月頃咲き、小さな花が集まって丸いかわいい形に見えます。葉にはV字形の模様があります。秋には紅葉します。
繁殖力が強い植物で、日陰でもよく増えていく生命力の強い植物です。茎は地表に沿って伸び広がり、葉が土と接するとそこから根が出てきます。地下茎を張り巡らせて浅い根から水や栄養を吸収するので、乾燥にも強い植物です。この地下茎が残るため駆除が困難です。静岡の住宅地でも道路や塀の縁にそって生え広がっているのを見かけます。
(3) アレチハナガサ(荒地花笠)
南アメリカが原産の帰化植物で、1957年頃から定着が確認されているそうです。現在は、東北南部から西日本まで広い地域に分布が拡大している、多年草です。名前の通り、荒れ地や河川敷に生育し、セイタカアワダチソウなどの外来植物とともに、そうした環境の在来植物の生育を妨げ、そこの生物相に大きな悪影響を与えると言われています。写真は、左と中央が静岡市の麻機遊水池で、右は大浜海岸で撮影しました。いくつか近縁種があります。
花の時期は夏で、2~3mmの小さな淡紫色のかわいい花を、1mを越す直立する茎の先につけます。
(4) ハルシャギク(波斯菊)
「ハルシャ」とはペルシャのことですが、現在のイランには自生していないとのこと。原産は北アメリカで、明治初期に移入された園芸植物ですが、全国で野生化して河原や道ばたに生育する一年草です。
花の時期は夏で、3~4cmの目立つ花を茎の先につけます。花の特徴からジャノメソウとも言われます。写真は静岡市の麻機遊水池です。近縁種のオオキンケイギクは、特定外来種で被害が深刻ですが、多年草で繁殖力が強いためと言われています。
(5) ハナニラ(花韮)
アルゼンチンが原産で、明治時代に移入された園芸植物です。球根植物ですが、放置していても良く育つので各地で野生化して、道ばたや草地で生育します。写真は静岡市の麻機遊水池の4月です。
花の時期は春で、鱗茎から花茎を数本伸ばしその先に3cmほどの花をつけます。鱗茎から十数cmを越す細長くて多肉質の葉を伸ばします。花の時期の後は、茎も含め地上部は見られなくなります。
葉にはニラやネギの匂いがするので、この名がありますが、有毒成分を含み、食べると下痢をします。野菜の花ニラとは別種で注意が必要です。