子どもたちにとって凸レンズは、ガラスでできた実験道具である。 しかし、特殊な形をした凸レンズは実験でしか使わない道具だと思っている子どもも少なくない。 そこで、凸レンズについて「ガラスでなくてもよい」「屈折を利用している」「自分でつくることもできる」など、 子どもにとって親近感を得られるような導入から、実像や虚像の学習に入っていった方が学習が深まると考えた。
(1) どんな場面で使うのか
「凸レンズのはたらき」の導入の授業で、丸底フラスコと新聞紙を渡して、「10分以内に燃やせますか」と投げかける。 話し合いながら試行錯誤するうちに「フラスコに水を入れてみたらいいのではないか」という意見が出てくる。 実際にフラスコで太陽光を集め新聞紙を燃やすことができると、子どもたちから歓声があがる。
(2) 準備するもの
丸底フラスコ×2 新聞紙 鉄製スタンド ポスターカラー 線香 ガスマッチ レーザー光源×3(図1) セロハンテープ
(3) 授業展開例
フラスコに水を入れると光を1点に集めたのはなぜか、図2を用いながら作図をして考えさせる。 仮説が立てられたら、図3、図4のように検証実験を行う。 (動画参照 https://youtu.be/gKErCz6QtYA)
検証実験後、以下の3点を押さえる。
1 水入りフラスコに入った光が一点に集まるところがある。これを焦点という。
2 水入りフラスコに触れた指が拡大されて見える。 焦点より近くのものは拡大されて見えるが、これを虚像という。
3 反対側についたてをおくと、焦点より外側のものが逆さまに映る。これを実像という。
(4) 学びを深めるために
黒板消しを叩いて、チョークの粉を飛ばすと、フラスコから出ていく光を確認することができる。 フラスコに入るときの屈折と、出るときの屈折によって光が集まるので、入る面と出る面を合わせると、よりコンパクトな凸レンズになることを伝える。 この学習をしてから、次時の、凸レンズの作る像を調べる実験へと展開していく。
凸レンズが、ガラスでなくてよいことを知れば、自分の目の中にもレンズが入っていることが容易に理解できていくだろう。 (執筆:西村)
この記事は、理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」№86から引用し編集したものです。
「科教協静岡ニュース」№69に掲載しました。
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