科教協静岡「研修交流会」の「小学校講座」での、小幡勝さん(科教協)の講演内容です。
小幡さんの実験講座は、小学校3,4,5,6年生の電気学習のポイントで実際の実験を行い、その都度質問にも答えながら進められました。小幡さんのレポートは、A4で15枚の大作です。
1.豆電球の明かりをつけよう 金属探し(小3)
小学校3年生の電気学習は10時間で扱いました。
乾電池の+と-にソケットの導線がつながって一周りの輪(回路)になった時、豆電球に明かりがつくことを体験した後の授業について話がありました。
(1)金属テスターをつくる
右図のような「金属テスター」を見せながら、明かりがつくためには電気の通り道がひとつながりの輪になっていることを説明し、「導線が途中で離れていると豆電球に明かりはつくかな?」と問い、先端(図の左端)のゼムクリップが離れていると明かりがつかないことを見せる。その後、両方のゼムクリップを接触させると明かりがつくことから、通り道が無くなると電気が流れないので明かりはつかないことを説明する。次にアルミホイルの上にゼムクリップを離してつけると明かりはつくかと問い、アルミホイルは電気を通すことを確認する。
次時に色々な物を挟んで電気を通すかどうかを調べるために、個人で金属テスターをつくる。そして、生徒は「今日やったこと」をノートの書きます。
(2)電気の通り道の間に物を挟むと、明かりがつくものとつかないものがある
課題 電気の通り道にどんなものを挟むと豆電球に明かりがつくか調べよう。
実験 子どもたち一人ひとりで調べる。調べながら明かりがついた物とつかない物に分け、ノートに記録する。
発表 明かりがついた物とつかない物を発表する。表を見ながら、気づいたことを発表する。
結果 電気の通り道の途中に、ピカピカ光っている物を挟むと明かりがついた。電気が通ってピカピカ光っている物を金属と言います。
小幡さんが金属テスターをお土産にして持ってきてくれたので、それを使って参加者も使いやすさを確かめました。
2.豆電球をつかっての直列つなぎと並列つなぎ(小4)
(1)豆電球の直列つなぎ
小学校の教科書では、乾電池を直列や並列につなぐことはあっても、豆電球を直列や並列につなぐことはないのですが、小幡さんは豆電球でも教えるそうです。
回路学習の復習をしてから、豆電球を直列に2つ、3つ、4つ、5つと直列につないでいくと、豆電球のフィラメントがだんだん暗くなって見えなくなることを示し、課題を出します。
課題 豆電球を直列に4つ、5つとつないでいくと、明かりが見えなくなりました。この時、電流は流れていないのだろうか?
討論
実験 検流計を登場させ、針の振れ幅で電流の大きさをはかれることを確認し実験すると、わずかに振れる。「では、豆電球を明るくするにはどうしたらいいか?」と問うと、「乾電池を増やす」という答えが出るので乾電池を増やしていくと明るくなり、針も振れが大きくなる。
この授業の後展開では、「モーターと乾電池の直列つなぎ」「モーターと乾電池2個の並列つなぎ」「モーターの回転と電流の向き」が続きますが、時間の関係で「豆電球の並列つなぎ」の説明になりました。
(2)豆電球の並列つなぎ
課題 豆電球を5個並列につないだら、豆電球の明るさはどうなるだろうか。
実験 豆電球は2.5V0.3A用を5つ用意し、裸導線(太さ2㎜くらい)で平行につなぐ。
結果 明かりは豆電球1個と変わらずつき、検流計につないでも豆電球に流れる大きさは変わらない。 直列だと豆電球が1個でもゆるんでいたり切れていると全部明かりはつかないが、並列ならば1個が切れても他は明かりがつく。家庭の照明は並列につながれている。
3.電流が流れると磁界ができる(小5)
(1)鉄にエナメル線を巻き付けて電流を流すと磁石になる。
永久磁石の復習をした後、
課題 鉄のボルトにエナメル線をまいた物に電流を通すと、ワッシャーがどこにたくさんつくか確かめよう。(クリップや鉄くぎの代わりにワッシャーが良い)
実験 ボルトを芯にした100回巻きの電磁石と乾電池1個を渡す。
結果 乾電池を外すとワッシャーが落ちることから、電磁石は電流を流したときだけ磁石の働きがある。電磁石にもN極とS極があり、電池の向きを変えると極もかわる。
(2)ボルトにエナメル線を巻いて、電磁石を作ろう(2時間)
「流れる電気が多くなるほど、電磁石の磁力もおおきくなる」を学習した後、電磁石を作ります。
実験 ①M6のボルトに内径6㎜の手製ボビン(筒)を通し、ナットをつける。
②太さ0.6㎜のエナメル線を8m(ペットボトルに巻いておく)用意し、端からできるだけ隙間なく巻きつける。その際、エナメル線の両端15㎝ずつ残す。(1往復半、やく300回巻)
③端の先端から5㎝ずつエナメル線を磨き、エナメルを落とす。
参加者には、100回巻きと240回巻きの電磁石、ワッシャー、紙やすり、電池がお土産として用意されていたので電磁石を使って強さなどを確かめました。
4.電流のはたらきを(小6)
小6は9時間扱いの計画です。(1)豆電球の発光、(2)電熱線・鉛筆の芯・電球のフィラメントの発熱・発光、(3)発電① 手回し発電機、(4)発電② 発電機、(5)発電③、(6)発電④ 光電池、(7)蓄電(コンデンサー)、(8)付け足しの課題
講座の時間が少なくなり、「(5)発電③」の中で扱われる「磁界の中でコイルを回す実験」を実際に行い、磁界を体感しました。また、「(8)付け足しの課題」の中で扱われる、紙コップでつくるヘッドフォン(これもお土産でいただきました)から流れる音楽を実際に聞くと、かなりの高音質でした。
小学校講座は、分かりやすく子どもたちでもできる実験が用意され、授業のどこでどのように使っていくかまで提案されていて役立つ内容でした。 (文の作成:科教協静岡 片山)
【感想】
・理科の授業は、実験が要であることを再認識しました。たくさん実験を見せていただきありがとうございます。学校でも紹介したいと思います。楽しく学ぶことができました。
・退職しましたが、専科として現在も3~6年までの授業を行っています。毎回新しい事がらに、ヒント・気づきをいただき実践に移すようにしております。今回もたくさんの収穫がありました。
・授業づくりについてのアドバイスや、実験の工夫を聞くことができてとても参考になった。
・最近、科教協に参加していないので、新しい動向や実験方法を知ることができて良かった。
【参考】第14回「研修交流会」の内容紹介(2023.5.21)