【講演内容要旨】第14回「研修交流会」での講演
講師 清 邦彦 先生 (NPO静岡県自然史博物館ネットワーク理事・元静岡雙葉中・高等学校教諭)
主に中1を中心に授業を担当。授業の始めにナウマンゾウの骨とか、何かインパクトのあるものを見せる。理科の授業が楽しみになるような工夫をした。
最初の授業で「理科は好きか?」と聞くと、「理科は気持ち悪いから嫌い。」という声が返ってきた。小学校でショウジョウバエや鶏の孵化の観察をやったからだという。
理科の授業が減り生活科になったり、高校では理科が選択科目になるなど、理科離れというより理科離しがあった。なぜ理科を勉強するのか?それは理科を学ぶのが面白いからだと子どもに伝えたい。テストでは正しい答えを1つ用意する。しかし、世の中には答えが無い、もしくはすべて正解ということがある。わからないから面白い。わからないから研究する。
「自由研究」はやらされているから面白くない。そこで、「理科新聞」に身近なところから見つけた研究を取り上げてみた。
*タンポポの花の観察 *柏餅の柏の葉のスケッチ *犬の餌とよだれの関係 *お父さんのいびきの研究
「理科新聞」に載るのがうれしくて研究する子が出てきた。
研究内容が思いつかない人には、誰にでもできる課題を与えた。新聞に載せた研究の一例としては、
Wさん・・・アリの巣の前に塩を置いてみました。何も出てきませんでした。
→ これは失敗ではない。アリは塩には来ないという結果。
Nさん・・・袋入り?の油を冷蔵庫に入れてみました。2日たっても凍らず冷たくなっているだけでした。
→ 高校へ行ってから凝固点降下を知り、今までの疑問解決の面白さを知る。
生活の中で、
なぜだろう? → わかりたいから知りたい → 学校の勉強 → わかった! → 理科は面白い
予想通りにならなかったのは失敗ではなく、予想とは違っていたことが明らかになる成功なのだ。
〈理科離れの前に自然離れの問題〉
昆虫や植物が好きな子はいる。しかし、昆虫などは苦手という多数派に合わせてしまう時がある。そこで好きな子だけを集めて「自然研究部」をつくり、昆虫や植物の採集、観察をやってみた。山の物、海の物、海外からの物。さらに高原観察や自然科学教室サイエンスツアー。箱根の火山の博物館の見学、磯遊び、樹海探検など、家族ではあまり行かないというところを選んでみんなで出かけた。普段のレポートでは、身近な自然体験について書かせた。
*学校に通う途中、よくシカが車に轢かれているのを見ます。先週も5日のうち3日見ました。 *イノシシがワナにかかったので焼いて食べました。 *お茶摘みをしました。 *タケノコ取りをしました。 といったレポートが出されたりした。
子どもたちに自然が見えなくなっている。学校の中だけでなく、外の本当の科学を覗かせる。本物を見せる。レベルの高いものを見せる。面白い理科は学校の外にあることに気付かせる。
学校の授業は基礎的訓練と考え、わからないことをわかるには、今わかっている事柄(今までの研究結果)を学ぶ。できないことができるようになるには、今できることをしっかりやる。
理科好きな子どもたちを育てるためには、理科教師(自分)が理科を楽しんでいることを生徒に見せる。話すことだと思う。
質問 自然体験教室はどのように実施するのか?
答え 希望者を集め日曜日か夏休みに行う。事前に職員会議で学校側の了承を得る。参加費は集める。 (文の作成:科教協静岡 小長井)
【感想】
・清先生の「わからないから面白い、わからないから研究する」という言葉と「子供たちの研究結果に”失敗”ということはない。そこに必ず発見がある。」という言葉が心に残りました。
・夏休みの自由研究をどのように生徒へ下ろそうか考えがまとまりました。これまで生徒の振り返りを書かせていたものから疑問を集めて例として提示したいと思います。
・清さんの話は 理科のおもしろさをもう一度考え直そうというきっかけになりました。
【参考】第14回「研修交流会」の内容紹介(2023.5.21)