静岡県菊川市六郷地区の小学生を中心とした「科学少年団」(主宰:山内一徳さん)の「科学実験教室」での 内容・資料の紹介です。
(山内さんのコメント)
留意点① すべて展示実験は白板にマグネットをつけてやりました。 ちと面白いと思ったのはガリバノメーター(検流計)をゴム磁石で白板につけて、 針の動きを全員に見せながらやれたことです。塩水でぬらしたペーパータオルも白板にはりつけて、 そこにいろんな金属をおしつけていったら、イオン化列の形がつくれたのはおもしろかったですが、
亜鉛とアルミで逆転したのはまいりました。また、備長炭を入手するのに苦労しました。 普通の炭ではあまりよくありませんでした。
留意点② いろんなことをわざと「くわしい事は高校にいくとやるよ」とBlackBoxのまま残した事です。 わかんない事がまだいろいろあると感じさせるのは大切でないかと思います。
以下は、子供達にくばったプリントです。 中の赤字はこちらで動いたことです。
はじめに
みなさんは電池を知っていますか。 みぢかにあって、簡単に電気を取り出せていろんな道具を動かしてくれます。 いわば「電気のかんづめ」のような、とても便利な道具ですね。 いろんな種類があります。
今日はその「電池」のしくみについての勉強です。 (ただし、ここであつかうのは化学電池といいます。その他にも「太陽電池」や「燃料電池」「熱電池」など いろいろありますが、その原理はみんなちがうので一番みぢかな「化学電池」にかぎってのお話になります。)
一体電池はどんな仕組みで動いているのか。 それはとてもむつかしいのですが、それをできるだけ簡単に説明してみます。
電池はなぜ電気をつくりだせるのか
そのためのいちばん基礎の基礎の知識のまとめ
① 金属の中には、どんな金属でも「とてもちいさくてマイナスの電気を持った粒」がいっぱいはいっていて、 自由に金属の中を動きまわっています。この自由に動きまわるマイナスの粒のことを「自由電子」といいます。 とても大切な言葉ですので、おぼえておいてください。
② 金属の中を一定の方向に「自由電子」がながれると「電流」が生まれます。「電流とは自由電子の流れ」です。電流はモーターを動かしたり電球を光らせたり、いろんな働きをすることが できます。
③ 電池とは電流を取り出すしかけです。 だから電池とは自由電子の流れをつくりだすしかけなのです。 そしてこれはとても大切なことなのですが!!!
④ 金属にはもう一つとても重要な性質があります。 それはどんな金属でも「自分のもっている電子を相手におしつけようとする働きがある」ということです。 そして、そのおしつける力は金属によってみんなちがうのです。 たとえば亜鉛(あえん)と銅では、亜鉛のほうが銅よりも電子を相手におしつける力がつよいのです。 そこで亜鉛と銅を電線でつないでやると、おたがいに相手に電子のおしつけあいをやって、 その結果としておしつける力のよわかった銅がまけてしまい、亜鉛から銅に電子がわたされていきます。 つまり亜鉛から銅に電子の流れがうまれて⇒「電流が生まれる」ことになります。 つまりこれは電池ができたことになるのです。
ところがここでこまったことがおこります…
≪実験≫ 金属として銅とアルミを選ぶことにします。 そして電線の中を電子がうごいたかどうかしらべるのに、検流計(ガリバノメーター)という道具を 使うことにします。このガリバノメーターは針が真ん中にあって、 もしすこしでもそのつながれた電線の中を電子が動くと針が動きます。
そこで右の図のようにアルミと銅をガリバノメーターにつなぎます。さあどうなるか?
ここからの実験はすべてゴム磁石で白板にはりつけて展示実験をやる。
全然針は動きません。どうしたらいいか…?
塩水でぬらしたペーパータオルを、銅とアルミをつなげるようにはりつける。
このことをまとめてみます。 つまり右の図のように、電子をおしつける力の強い金属A(ここではアルミ)と、 それよりも力の弱い金属B(ここでは銅)を線でつなぎ、AとBの間に図のCのように 「塩水でしめらせた紙」をおいてみます。そうすると…
図のCでは何がおこっているのでしょうか。 実はここではCは紙に「塩水」をふくませたといいましたが、もっとただしくいうと 「イオンをふくんだ水分」です。 「イオン」とは、電気を持ったちいさなつぶのことなのです(プラスの電気をもっていればプラスイオン、 マイナスの電気をもっていればマイナスイオンといいます)が、ここではイオンについては勉強はしません。
ただそういうものがあるということだけ知っておいてください。 イオンはマイナスの電気を持った「自由電子」とはけたちがいにおおきな粒です。 そのようなプラス電気をもったプラスイオンやマイナス電気をもったマイナスイオンが たくさんとけている水分をしみこませた紙Cを、図のように金属Aと金属Bのあいだにおいてやると、 電子がAからBに流れて、電池が生まれました!!
これが世界で最初の電池です。1800年にイタリアのボルタが発明しました。(ボルタ???)
もう一回まとめておきます。
二種類の金属の間を、イオンをふくむ水分をふくませたものでつなげてやると、 その二種類の金属の間で電子が流れて電流になり、電池がうまれることになります。
ただしここで、それではCの中でどんなことがおこっているかということについては説明しません。 高校の理科で勉強します(ちと小学生にはむつかしすぎます)。いったい何がおこっているのかなあ?? 不思議だなあという気持ちをもって高校に進んでください。それまでおあずけです。
《先生が見せてくれる実験》
① 電子の流れを調べるのにつかう道具
※ ガリバノメーター ※電子メロディ ※デジタル電子時計(100均ショップにある)
(これらは弱い電気でも動きます)
※モーター(弱い電気ではなかなか動かないのですが…)
これらをつかいわけて電流をみつけよう。
② 金属AとBをいろんな金属にいれかえてみよう。 電子は「電子を相手におしつける力」の強い金属からよわい金属に動く! ガリバノメーターの針の動きで電子の流れがわかります。 さあ電子をおしつける力はどちらが強い?? 強いほうにまるをつけよう。
※銅とアルミ ※銅と亜鉛 ※アルミと鉄 ※アルミと亜鉛
※鉄と亜鉛…ここで鉄はスプーンをつかいます。
強い順の列をつくってまとめる。
ここでひとつのイオン化列にあたるものができる。 イオン化傾向の直前までいっているが、イオンの生成原理はやっていない。 また実験条件によっては亜鉛とアルミは結果が逆転することがあるので注意。 そうなってしまったら正直に謝って、ここは逆だと言ってしまう。
ここでおもしろいものを紹介します。 それは金属ではないのに電気を流すことのできる物質です。 炭素といいます。つまり炭です。たとえば鉛筆やシャープペンシルのしんは炭素でできています。 だから電気が流れます。でも他の金属のように他に電子をおしつける力はありません。 しかし電気が流れるので他の金属と組み合わせると、電気が流れて電池になります。 ⇒実験してみましょう!!!
炭と色々の金属の組合わせをやってみせる。
ここでみんなで実験1 33円電池をつくる
二種類の金属をくみあわせれば電子の流れが生まれて電池になります。 ここでアルミと銅による電池をつくってみましょう。アルミは1円玉で銅は10円玉を使います。
1) くばられたろ紙に10円玉をくっつけて、10円玉よりも1ミリくらい大きく、ろ紙を切り取ってください。 それを三枚切り取ります。そしてピンセットを使って塩水につけて下さい。
2) 図のように10円玉、塩水でしめらせたろ紙、1円玉の順に重ねます。 これで電池になっていますが、ちいさすぎて弱い電気しかおこりません。 そこで同じものを三つつくりかさねてみます。 このつなぎ方が( 直列 )つなぎですね。
3) 三つ重ねて、上下に電子メロディの線をつなげて、なるかどうか確かめて下さい。 ならない場合は線のつなぎ方を逆にしてみます。
③ 二種類の金属の間は、「イオン」をふくむ水分として「塩水」でしめらせた紙を使いました。 でも塩水でなくてもイオンがふくまれていれば電池がつくれます。 そしてイオンを含むものはわたしたちの身のまわりにはたくさんあります。 塩水以外のもので電池になるかどうかためしてみましょう。
※ 野菜で…銅と亜鉛を使います。1個だけでは弱かったら二つつくって直列つなぎします。
これで電子時計を動かしてみましょう。 ⇒野菜時計ができた!
白板の上でやってみせる。電子時計は100均のものを使用。
※人間の体もたくさんのイオンをふくんでいます。人間の体でも電気がおこります。 ガリバノメーターでたしかめてみましょう。
アルミニウムをまるめたものとスプーンを使います。 ⇒人間電池!!!
※でもこれだけでは(一人では)おきる電気がすくなすぎます。
ここでみんなで実験2 班で協力して人間電池で電子メロディーをならそう
家から持ってきたアルミはくをまるめて、てでにぎれるくらいにしてください。 そしてスプーンとアルミはくを図のようににぎればいいのですが、 電気がよくながれるように手を塩水につけてぬらしてください。
そして、配ってあるクリップつきのコードで全員の電池を直列つなぎにすればいいわけです。 つまりAさんの左手のアルミ⇒Aさん⇒Aさんの右手のスプーン⇒コードでつないで ⇒Bさんの左手のアルミ⇒Bさん⇒Bさんの右手のスプーン⇒コードでつないで ⇒Cさんの左手のアルミ⇒Cさん⇒Cさんの右手のスプーン⇒コードでつないで⇒ ・・・・というように輪にすればいいわけです。
そして初めの人の左手のアルミと最後の人の右手のスプーンの間に、 電子メロディを入れてつないでやります。 そうすると6人の人間電池が直列つなぎになって、電子メロディを動かすことになります。 もしならなかったら電子メロディのつなぎ方を逆にしてください。 そしてみんないっせいにスプーンとアルミをにぎりしめてください。
さあうまく電子メロディはなるかな?? 班での協力がポイント
≪ここでクイズです。考えてみよう…≫
さて、先生がやってくれたいろんな金属のくみあわせでつくる電池の中で、 一番電気をよく流す強力な電池はどれでしょうか。 強力な電池とはたくさんの電子が流れてくれる電池です。 何と何を組み合わせたらいいか??
炭素とアルミの組み合わせはすぐ子供達は気が付くし、最強であることの予測も納得する。 「電子を相手におしつける力の大きさの差」ということはイメージしやすい。
ここでみんなで実験3 電気自動車にちょうせんしよう!!!
そこでこの電池をつかって自動車を走らせてみたいと思います。さてうまく動くか。
工作を楽しむ。 電池で動かすまでやり、それを「木炭電池といれかえる」のが狙いである。 車が動いただけで喜んだ。
まず自動車をつくろう
① 台をつくります。
ビニルダンボールの前と後の部分を、下の図①のようにきりとります。 縦に切るのはハサミでやり、横に切るのは線引きをあててカッターできります。 図②の2センチの切り込みは、だいたいまんなかにくるようにして切ってください。
② 台の前後のきりこんだところに車輪をはめます。
図③のように後輪をはめるときは、あらかじめ切り込みのところに青いプーリーをおいて、 図のように左から車軸をとおすときにいっしょにとおします。 この時いっしょに輪ゴム2本もはめておいてください。 輪ゴムはプーリーにはめるベルトになります。
③ モーターをとりつける。
くばられた木片の上と下に、図④のように両面テープをはりつけてください。 そして、くばられたモーターにくばられた黄色のプーリーをはめてから、 木片の上のテープのシールをはがして、モーターを木片にとりつけて下さい。 プーリーが前に出ているようにとりつけます。
②でつくった車輪のついた台車の青いプーリーと黄色のプーリーの位置がうまく一直線になるよう、 できるだけ青いプーリーに近くに位置を決めて、 木片の下の両面テープのシールをはがしてモーター をとりつけて下さい。
④ これで青いプーリーとモーターの黄色いプーリー(小さいほう)の間に輪ゴムをかければ完成です。
別に用意した電池ホルターにいれた乾電池を車の上にのせて、モーターの線と電池ホルダーの線を 別にくばられたワニ口コードでなぐと、モーターがまわって自動車は動くはずです。
・・・動かない? その理由は何でしょうか??
理由がわかったら改良してみましょう。
ここではわざとゆるいプーリーを配った。 問題点を自分で発見させて対策を考えさせたかった。 プーリーがゆるいことに気づいたら、班別に用意してあるアロンアルファで固定させる。 しかしそこまではいけなかったので、今回は最初からプーリーを車軸に固定することを助言した。
・・・電池で自動車は動くようになりましたか?? 動いたら電池は外してください。
一番強いてづくり電池をつくってみよう アルミ備長炭電池
① くばられた備長炭を一度塩水のはいった容器にいれて、よく塩水をしみこませてください。
② ティッシュペーパーに塩水をしみこませて、備長炭にていねいにまきつけます。 はしの銅線がとりつけてあるところは、ティッシュをまきつけないでください。 反対側は完全にティッシュでおおい、炭の表面が外にみえないようにします!
③ ティッシュをそとからにぎりしめて空気を追い出します。
④ その上からはしっこをすこしおりまげたアルミをまきつけます。(右図)
アルミはティッシュを全部おおわないで、かならずはしからティッシュを5ミリくらい出しておく。 アルミはそとからにぎりしめて空気をおいだし、しっかりとティッシュにくっつかせる。
これで電池(図⑤)ができました。 自動車にのせて、備長炭に巻き付けたはしの銅線とアルミのはしを、それぞれワニ口コードでモーターにつなげてみましょう。 もし動かなかったら実験ペアの人の電池ものせて、直列つなぎにしてみましょう。 さあ、備長炭で電気自動車は動くでしょうか ?!!!???!!!