今回「電流と磁界」の単元において, 「空間的な視点」と「比較」の見方・考え方を働かせるための手立てを, どのようにするかが課題でした。そこで今回使用したのが『中学校「理科の見方・考え方」を働かせる授業』(山口晃弘・江崎士郎(編) 東洋館出版社)の中で岸正太郎先生の考えた「ノートから飛び出すモーター」です。これは,ペーパークラフトで作る立体的なモーターの模型です。 今回はこの本に載っていた整流子のあるモーターの模型に加えて, 岸先生から整流子のないモーターの模型もいただき,その2つを用いてつくりを「比較」させながら授業を行いました。
● 動くモーターの模型を利用した授業展開
単元の一番初めにモーターの模型(整流子あり:図2)をつくった。この模型からモーターが磁石とコイルからできていることを見いだし,磁石とコイルでなぜモーターが回ることができるのか, ということから授業を進めていった。
前時 電気ブランコの実験と結果のまとめ
本時
① 前時の結果(フレミングの法則など)を用いて, コイル全体を磁石の中にいれて電流を流すとモーターはどうなるか考えさせる。 → ほとんどの生徒が, コイルは回転すると答えた。
② 整流子のないモーターの模型(図1)で動きを考えさせる。(空間的な視点)
③生徒の中から,このモーター(整流子のないモーター)では半回転ごとに動きが変わって,回転し続けることができないとの意見が出てきた。
④ 「どうしたらモーターを回転させ続けることができるのか」について仮説を立てさせる。→半回転ごとに磁界の向きを切り替える, 電流の向きを切り替えるという2つの意見が出た。
⑤最後に生徒たちがこの単元の最初に作った整流子ありのモーターの模型(図2)を渡し,これではどうなるかと考えさせた(比較)。多くの生徒が, 「モーターは半回転ごとに電流の向きを切り替えるつくりになっているため,回転し続けることができる。」と気づくことができた。
●授業を行ってみて
模型を用いることで,電流と磁界と力の関係を空間的な視点を働かせて考えることができるとわかった。整流子がありとなしで動きを比較することで,多くの生徒は回転し続ける仕組みに着目することができた。 回転し続けるモーターの仕組みがわかったときには多くの生徒から感動の声が聞こえた。
作った模型は, 授業後に折りたたんでノートなどに貼って保管できるため, いつでも確認できる。
空間的な視点で考える必要があり, 苦手な生徒も多い単元だからこそ, より実物に近いものを用いて思考の支援ができる今回のようなペーパークラフトはとても有効的であったと感じる。
参考
・岸正太郎(2017)「ノートから飛び出すモーターを回して…」
山口晃弘・江崎士郎(編) 『中学校「理科の見方・考え方」を働かせる授業』(東洋館出版社)
・理科の教材発明家@しょうた「理科の紙技!ペーパークラフトを授業に!」
岸先生は他にもたくさんのペーパークラフトを考案されており,それらをブログにて公開されています。興味のある方はぜひご覧ください。 (執筆協力:青嶋)
この記事の問い合わせ先:高橋政宏(理科サークル「SCIENTIA」)
m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)
この記事は、「科教協静岡ニュース」に、SCIENTIAのニュース「Serendipity」から引用して掲載した。