密度の授業をするのに、中学校にある密度測定用体を使うことが一般的ですが、多くの場合これらは円柱形であり、体積を測定するのに手間がかかります。そこで今回はすべて立方体の物体を使いました。このことで体積の計算が圧倒的に楽になり、生徒たちも密度に取り組みやすくなりました。
また、授業展開の最後に黒檀の密度を測定し、この物体の水に対する浮き沈みを考えさせることで、密度の大小と浮き沈みの関係を考えさせる機会となります。そのために黒檀はとても良好な材料だと言えます。
「密度」の授業の実際
授業第1時
準備:3cm立方の木と1.5cm立方の鉄を準備する
① 木と鉄ではどちらのほうが重い? → そりゃ鉄だよ。
② じゃあ天秤で比べてみるよ (木のほうが大きくて重いものを準備) → 木のほうが重くて上皿天秤が下がる:木のほうが重いじゃん → おんなじ大きさじゃなきゃダメだよ。
③ でも同じ大きさにはできないよ。鉄は切れないし増やせないからどうする? → 同じ体積を計算で求めればいいのさ。(小学校でやっていること)
④ 同じ体積っていくつにするの? → いろいろな数値が出てくるが最終的に1cm立方で比べることに納得する。
⑤ じゃあ今回の鉄と木の1cm立方の質量を計算して求めてみよう。
授業第2時
準備:5cm立方の発泡スチロール、2cm立方の天然ゴム、3cm立方の黒い木(黒檀)を準備する
① 今日は前回で学んだ密度を計算で求めてみるよ。ここに三つの物体があるけれど、それぞれの物体の質量を電子天秤で測定して密度を計算で求めてみよう。立方体の大きさは黒板に書いてある通りだよ。
② 各班で測定して計算して密度を求める。(黒板に9つの班の結果をすべて書く)
③ じゃあ次にこれらの物体が水に浮くか沈むか予想してみよう。
④ まずは発泡スチロールだ、これはどうだろう? → 浮くに決まっている → 演示実験で明確に浮くことがわかる (ほとんど沈まないことを生徒によく見せる) → じゃあ前回やった木はどうなる → そりゃ浮くさ → 演示で示し、発泡スチロールとは水面下に沈む割合が異なることを見させる。
⑤ じゃあ、次は「天然ゴム」と「黒い木」だ。これらは浮くのか沈むのかどっちだろう? → 手がかりがないから水の密度を教えよう。水の密度は1.0g/cm立方だ。 → じゃあ天然ゴムは沈むよ。
⑥ 天然ゴムはなぜ沈むと考えるのか → だって1よりも大きいから沈むよ。鉄だって1より大きかった。→ 各班で実験:沈むことを確認。やっぱり沈むんだ。
⑦ じゃあ、この黒い木はどうなんだろう。密度の計算によると1.0~1.2あたりの数値になる。 → やっぱり木だから浮くんじゃないか。1よりも微妙に大きいから沈むんじゃないか。もしかしたら水中で静止するかもしれない。(このように、ここでは意見が揺れ動き意見が分かれる)
⑧ じゃあ各班でビーカーの中に入れてみよう。 → あ、沈んだ。
⑨ なぜ沈んだの? → 密度が1よりも大きいからだ。1.0というものもほんの少しでも1より大きければ沈んでしまうんだ。
⑩ じゃあ浮く物体は何で浮くの? → 密度が1よりも小さいんだ。
参考:
・朴木(ホオノキ)、桂(カツラ) 3cm立方…1個30円、東急ハンズ
・黒檀3cm立方…1個180円、東急ハンズ
・発泡スチロールは5cm立方、天然ゴムは2cm立方でホームセンターで大きなものを購入し、 カッターで切断した。そのため切断面はきれいではないがあまり生徒は気にしない。
理科サークル「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」No.55(2019.9.8)より転載
紹介:山崎(理科サークル「SCIENTA」)
問い合わせ先:髙橋政宏 連絡先:m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)