この実験は最初、アメリカの大学で学生実験として行われていたものが、日本にも伝わり大学の学生実験として始まり、現在は高校、中学などにも広がっている。 内容としては、限られた資材を使い限られた時間内に、生卵を格納する装置を作成して、高所から投下して生卵が割れないで地上に着地するという事を競うものである。
この実験の背景には、宇宙探査機が未知の星に到着して、無事に軟着陸させるにはどのようにしたらいいかという宇宙開発での基本的課題がある。 基本的な動機づけとして、導入部分でそのような話をした。 子供達がある課題に取り組む時には、このような「物語」を利用するのは最も効果的である。 そこで利用したのが、次のサイトに含まれている動画である。
「火星探査機の着陸方法色々 Yの王宮」
https://yspalace.hatenablog.com/entry/20120722/p1
① コンテストの内容と進め方
・限られた材料で → 今回はA2画用紙2枚のみ(大学では1枚でやっている)。 のり、ホッチキス、セロテープのような接着材料は除いて、他の材料は使わない。
・限られた時間に → 2時間以内
・チームで協力して → 2人一組のチームで1台を協力してつくる。
・出来るだけ軽い機体で → 卵をのぞいた重さをあらかじめはかる。
・目標地点にできるだけ近くに落とす。
・卵が割れたら失格で、あとは軽い機体ほどよしとする。
注意点は
・地上に着地した時の速度を、できるだけゆっくり落とすにはどうするか。
・卵につたわる、着地した時の衝撃を、どうしたら小さくできるか。
・今までの例では、着地した時、横に倒れて卵が機体から飛びだしてしまったこともある。 そこでどのようにして卵を機体の中に固定するか。
子どもたちへの提案
「最初にアイデアを相談してもらいますが、上級生は下級生の意見もよく聞いてやってくださいね。 そしていいところはとりいれてどんどんアイデアを改良したチームが勝ちます。 また製作が始まったら、協力して仕事をすすめましょう。仕事の分担はリーダーが決めてもいいでしょう。」
② このコンテストの良い点
・創造性を深める → 限られた資材で、限られた時間に、卵を保護しなくてはならないという目的を持って機体を考えなくてはならない。
・これをコンテスト形式で競争にしたところ、集中度があがった。
・機体を軽く作らなくてはいけないが、同時に強固に作らないと卵が保護できない。 これは一見矛盾した課題であるが、集中した思考を深めるのに、適切な課題である。
・他の企画では1人でやるところもあるが2人のペアにしたところで、協調性が深まった。特に異年齢ペアであることがよかった。
③ 結果
14機中6機が成功であった(成功の割合は大学生でもあまり違わない)。 機体重量により順位を付けた。それなりの独自性のある機体や、ていねいな作りの機体がよい結果を出している。 パラシュートのできより、下からの衝撃吸収がしっかりしている機体が良かった。
以上は、「静岡理科の会」(2019.10.20) での山内一徳さん(きくがわ科学少年団)の報告で、元の資料は、A4で7ページです。
山内さんは、高校を退職後に菊川市の六郷地区を中心として、市から補助も得て科学少年団を運営して約10年になります。 小学3~6年生の約30名の団員で、年間10回の科学実験教室を行っています。 この企画は、その一つです。(文責:科教協静岡 長谷川静夫)
問い合わせ先:山内一徳(きくがわ科学少年団)ymchkznr@sea.plala.or.jp