科教協静岡主催の「静岡理科の会」(2019.10.20)での高橋政宏さん(静岡大学教育学部附属静岡中学校)の報告です。この報告の資料はA4で15ページです。
高橋さんは、物体の運動の単元はいきなり斜面での運動が出てきて、導入が教える側の都合でできている典型的な教材だと言います。それは、自由落下運動が非常に速い運動であり、中学生がその分析を精密に行うことは非常に難しいためです。斜面を用いることで速すぎる運動をスローモーション化して、自由落下運動の規則性を求めようとしているのです。
しかし、子どもたちにとって斜面そのものは面白みがなく、探求のスポットライトが当たらない。そこで、斜面運動の必要感が生まれる授業展開を考えたとのことです。
(文責:科教協静岡 長谷川静夫)
① 自由落下運動の規則性
自由落下運動では、物体の静止状態から1単位時間に1の距離進んだとすると、2単位時間に4の距離進む。これは、X単位時間にXの2乗の距離進むことを意味しており、斜面運動の規則性と一致するため、斜面を用いて分析しやすい。
② 自由落下運動と水泳の飛込
飛込競技は「3m飛板飛込」「10m高飛込」「シンクロ飛込」がある。
下写真は、3m飛板飛込競技より
飛び込みも自由落下運動の規則性に従っているため、各種目とも選手の体重にかかわらず落下時間はほぼ一定である。
「3m飛板飛込」では1~2m高く上がり4~5mの高さの頂点から2回転半している。ところが、「10m高飛込」では3回転半で、落下距離が倍ほど違うにも関わらず、回転数があまり変わらない。
そこで、画像より落下時間をストップウォッチで計ると、「3m」が1.22秒、「10m」が1.48秒であまり変わらない。なぜ高さが倍になったのに落下時間は倍にならないのかと問題にする。
③ 自由落下運動と斜面運動
自由落下運動は、1mの高さの落下時間を実際にストップウォッチで測ってみるが、ばらつきがでて難しい。そこで、ハイスピードカメラで撮影した自由落下運動の映像も見せると、スローモーション化すれば良いことがわかる。
次に見せる、動画Aは2つの違う速さで落下する自由落下運動?に見えるが、暗室で斜面が見えないようにして、蓄光塗料で光らせた球体を使い自由落下と斜面を下る運動を撮影したもので、実は動画Bの実験だと種明かしをする。
斜面運動は、一定の大きさの力が連続してかかり続けるときにおこる現象という意味で、自由落下運動と同様の運動である。ただし、斜面運動は重力よりも大きさが小さい力であるため、加速度が小さい。その実感は、斜面運動を正面から見るとよくわかる。つまり「斜面運動は自由落下運動のスローモーション」と言えて、規則性を探ることができる。
④ 斜面運動の分析と自由落下運動の規則性の発見
角度を変えた斜面運動の実験より距離と時間の関係を分析して、その結果を比較することで自由落下運動の規則性を推察する。
その後、改めて「3m飛込も10m飛込も、落下時間があまり変わらない」理由を考える。
問い合わせ先:「SCIENTIA」 高橋政宏 m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)