NPO法人「地下からのサイン測ろうかい」(静岡県内外の地下水位と水温の観測を経常的に行うことで、他の観測情報とつなぎ「地下からのサイン」を受け取り、大地震発生の警戒を呼びかける情報を発信している団体)の総会での講演です。(上久保廣信)
この講演は、インターネットの「YouTube」に前後編合わせて約30分の動画がアップされています。
→ 動画サイトのリンク先 問い合わせ先:上久保廣信(hkamikubo@gmail.com)
人は大きな災害に直面すると、さまざまな反応が生じます。 大地震を体験するとどのような心理状態になって、どんな行動をとるのか、災害の最中に私たちに何が起こるのかについて考えていきます。 直面した際に人がたどるおおきな流れは、体験している現実を認めようとしない「否認」、 そして強いストレスの中で現実を理解し対応を模索しようとする「思考」、そして生存のための「行動」という3つの過程をたどることをお話します。
第一段階「否認」
2001年9月11日に発生したニューヨーク貿易センタービルにテロリストが操縦する旅客機が突入した際の人々の行動から紹介します。 当時、ビル見学者のガイドをしていたZさんから聞いた話です。 Zさんは、飛行機がビルに突入したあと、そこにとどまること以外は何もしたくなかったといいます。 ふつう、生前本能が働けば、出口に向かう衝動に駆られると考えますがそうではありませんでした。
第二段階「思考」
強いストレスの中では人の思考能力は大きく低下します。 ある飛行機パイロットが着陸時にタイヤが出ると点灯する緑のランプが点灯しなかったことから、それを確認することに集中してしまい墜落してしまった例があります。 また、戦闘機パイロットが航空母艦から戦闘機を飛ばそうとするときに、駐機場を横切って飛行機まで歩いて行くときのIQの半分を失うという報告があります。
こうしたときの思考の特徴を考えます。
第三段階「行動」
災害に直面した際に多くの人はパニックに陥るのかというとそうではありません。 最も多く陥る行動は「何もしない」ということです。これは麻痺と言われる現象で災害時の最も重要で不思議な行動です。 パニックよりもずっと頻繁に起きます。第一の段階である「否認」に陥っているときに、一刻も早くこの段階を断ち切って「行動」に移ることの重要性を指摘します。
それには、その場に居合わせる人が大きな影響をもたらします。 また、パンと音を出して手をたたくなど、他のことに気を向けることも有効とされています。 動けなくなっている「麻痺」の事例や反対の過剰反応である「パニック」の事例から考えます。
参考文献:アマンダ・リプリー著「生き残る判断生き残れない行動」光文社(著者は5年に及び過酷な体験をした生存者にインタビュー)