理科サークル「SCIENTIA」と「科教協静岡」の会員の高橋政宏さんが、「授業開きで教師が蒔きたい『3つの種』」という記事を、 科学教育研究協議会編集の月刊誌「理科教室」(本の泉社発行)2019年4月号の特集「理科の授業開き」 (参考:科教協のHP)に掲載しています。
高橋さんは、
‥‥あなたも、自分が子どもだったころ、この時期は「どんな先生が授業をしてくれるのだろう」「どんな授業になるのだろう」とワクワクしながら授業開きを待っていなかっただろうか。 4月の授業開きは子どもにとっては最大級のやる気を持った時期なのである。
それなのにいきなり「去年の学習の復習プリント」をしたり、「授業の約束やルール」の説明だけで終わったりしては、興覚めである。 子どもたちは「先生がどんな授業をするのか」にこの上ない期待をしているのである。
この時期に子どもたちにとって「授業っておもしろいな」と思える授業開きをすることが、「この先の授業を共に楽しもう」という教師からのメッセージになるのではないだろうか。
そして、「これまでに行った授業開き」(中学1~3年生むけ) として、
「キューブの下には何が書かれているのだろう」:規則性を探すことが、科学の真実追究の過程
「DHMOについて考えよう」:危険に見えてくる説明文だが「水」のことと種明かしして、価値判断が重要と
「塩水と砂糖水を区別しよう」:見わける方法を議論させ、出た意見はすべてその場で実験
「ツクシの胞子を観察しよう」:顕微鏡でのぞくと想像を絶する姿が見えて、不思議と感動を覚える
(1) 中学1年生の授業開き~植物単元のガイダンスと関連させて~
① ツクシはどうやって子孫を残すか
誰でも見たことのあるツクシをじっくり観察し、考え、学ぶことで「身近にはいろいろな発見があるのだ」ということを実感する授業です。
ツクシの頭には胞子がたくさん入っています。顕微鏡で観察をすると、ツクシの胞子には弾糸と呼ばれる紐状のものがついています。 この胞子にそっと息を吹きかけると、糸がまるで動物のように縮こまります。ツクシの胞子の観察は生徒を魅了するはずです。
② 種子にはどんな機能があるか
種子は植物の種類によって、それぞれ形や機能が異なります。 種子の役割のみならず、植物が多様であること、からだのつくりが巧妙であることなど、植物の魅力が感じられる授業になります。 実物の種子をたくさん見せられれば、なお良いガイダンスになるでしょう。
(参照:「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」No.40の西村紳一郎さんの記事より)
(2) 根毛を見やすくする方法
カイワレ大根が手にはいったので、発芽させてみました。その際、脱脂綿の上に黒い画用紙を載せてみたところ、根毛が非常にはっきりと見えました。 これならば、生徒が見た時に感動するだろうなと思いました。
「SCIENTIA」例会では、「根毛は、ツユクサのおしべのように細胞が一列に並んでいるため、水分や栄養の吸収効率が良い」という話題になりました。 調べてみると根毛は「根毛細胞」という1つの細胞だそうです。1つの細胞ならば、なおのこと吸収効率が良いことは納得できます。
(参照:「SCIENTIA」のニュース「Serendipity」No.34の高橋政宏さんの記事より)
(3) 塩水と砂糖水を区別しよう(中学3年生におすすめ)
どちらも無色透明な液体であるため、見た目に区別はできません。 「どのようにしたら区別できますか」と問えば、すぐに「なめてみる」と返ってきます。 「それ以外にも考えてごらん」と続けます。
蒸発させて、結晶を観察する。四角い結晶なら食塩 / 残ったものをさらに加熱して、黒く焦げれば砂糖 / 外に放置して、アリがたかれば砂糖水 / リンゴにつけて、変色させない方が食塩水
すべてその場で実験させてみます。 同じ結論でも、実験方法はたくさんあることの面白さを感じるため、その後の授業でも別の方法で考えようとする意識が芽生えます。
さらに教師から以下の実験を見せると、興味が広がります。 この時、どちらがどちらなのか明かさないで演示をし、変化があることだけを示した方が、学びにつながりやすいでしょう。
硝酸銀を加える / 電気を通す / ろ紙を液体に浸し、それを1円玉と10円玉ではさみ、電子オルゴールを接続する
問い合わせ先:高橋政宏(理科サークル「SCIENTIA」)
m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)
尚、「理科教室」2019年4月号の他の特集記事は、「(小学校)5年生の授業開き-『植物の繁殖』生物と無生物-」「2時間使う高校での授業開き」 「高校『地学基礎』の授業開き」「理科は自然がくれたパズル」があります。