12月に、静岡小学校理科サークルの2回目の例会が開催されました。そこでの報告の1つです。
ふりこのはたらき
この「ふりこのはたらき」の単元は,実験をするときの条件設定の必要性を理解するためにあります。 そして,自分たちで条件設定をしながら実験し,「ふりこが1往復する時間は,ふりこの長さ(糸の長さ)によって変わる。重さや振れ幅によっては変わらない。」 という,きまりを発見することに授業の目的があるようです。
ふりことは
ふりこの振幅 振り子が行ったり来たりするとき,その静止位置から最大の変位までを振幅と呼ぶ。
ふりこの周期 振り子が一往復するのにかかる時間。
ふりこの長さ 支点から振り子の重心までの距離。
【実験のコツ 1】
振り子の長さは,ふりこの重心で決まります。ですから,ふりこの腕は重さを無視できるような素材でつくります。 また,おもりを縦につなぐと重心がずれてきます。Bのように横につるして重心を同じ位置にくるようにしてください。
メトロノームのおもりを下げると周期が短くなります。しかし,メトロノームの針の長さは変わりません。 これは,ふりこの重心が支点に近くなったからです。振り子時計も同じことです。
【実験のコツ 2】
ふりこのふれ幅を大きくすると等時性(周期がふりこの長さで決まる性質)は,成り立ちません。 子どもの実験では,糸がたわんで大変な結果になります。 そのためにも糸を長くして振れ幅の変化を印象付ける必要があります。
振れ幅の観察方法としては,分度器を拡大コピーして天秤に貼り付けているのをよく見かけます。 これでは,糸の張り方等で誤差が生じます。そこで,ふりこの下にてこの腕等を置いてふれ幅を比べることをお勧めします。 大型振り子の場合は,いすなどを置いて目印にしてもいいと思います。
【ふりこの学習に入る前に】
ふりこの学習に入るときは,長いふりこを準備します。 ゆっくりゆっくりゆらしながら,ふりこの1往復する時間・ふりこの長さ・おもりをはなす位置・ふりこの重さなどの言葉を体験的に理解させます。
今回問題にするのは,ふりこの一往復する時間です。 私は,教室にオークションで購入した振り子時計(4500円)をかけてあります。 ある日は,時計がどんどん進むようにしておきます。朝の会に時間を合わせても,中休み・給食・放課後と時間が進んでしまいます。
次に日には,遅れるようにセットします。朝の会に時間を合わせても,中休み・給食・放課後と時間が遅れてしまいます。こんな不思議を体験して,ゆらして遊ばせてから,授業に入ります。
1往復する時間を測定しましょう。ストップウオッチを使うと正確すぎて困ってしまうことが多くあります。 1/100秒まで測定するとどうしてもずれが出ます。また,測定者やその時のやり方でも誤差が出ます。 そこで,1往復する時間が同じことを確かめるのにみんなで数えるやり方を導入しました。
中央線を右から通るときに心の中でに,「0,1,2,3,4」まで数え「5」は,一斉に声を出します。 教室の前と後ろに大型振り子をつくり,背中合わせで数えます。「5」のときにだけ,振り返るようにしましょう。 大型振り子は,ゆったり動きますから誤差が少なくなります。実験には誤差が付き物です。 ちょっとした振り子の長さの違い・子どもたちの視認力・支点との摩擦等たくさんの誤差要因があります。
そうした誤差を吸収するのがこの実験です。 中央線を通るスピードがゆっくりなことや多くの子どもによって同時に測定する平均化によって,誤差は吸収されてしまいます。
【授業の流れ】
【教材で使う振り子は】
ふりこの学習に入るときは,長いふりこを準備します。 ゆっくりゆっくりゆらしながら,ふりこの1往復する時間・ふりこの長さ・おもりをはなす位置・ふりこの重さなどの言葉を体験的に理解させます。
教師は,程度【振り子の長さ200cm・重さ20g・振れ幅20°程度】を提示して周期を測定する。 1秒よりもとてもゆっくりした振り子になる。(測定には,5回ほどを合計し1回分を求める。平均は学習していない。)
課題1 ふりこの1往復する時間を短くしたいと思います。どうしたらいいでしょうか。
子どもたちからは,次の条件が出てくることが予想されます。
ア 振り子の長さを短くする。(長くするも出てくるかもしれません)
イ おもりを重くする。
ウ おもりをはなす位置を高くする。
実験はどれからしても良いですが,私は「ア おもりのひもの長さ」を最後にすることにしています。 課題2・3で「おもりの重さ」「おもりをはなす位置(ふれるはば)」をかえても1往復する時間は変わらないことを確かめます。 最後に,1往復する時間の変わる「振り子の長さを短くする。」に挑戦します。 おいしい実験は,最後のほうが楽しいからです。
「ふりこを短くして重くする」という複合的な条件を出す子どももいます。 とりあえず認めておき,1つの条件を変えながら実験し,複合条件に進むようにします。 短くすれば,重さには関係ないことも理解できる子もいます。 しかし,「ふりこを短くして重くする」とやっぱり周期が短くなったという子どももいます。 子どもの発達段階で仕方ないと思います。
課題2 おもりの重さを100gから200gにしました。 振り子の長さとおもりをはなす位置は変わりません。ふりこの1往復する時間は,短くなりますか。
流れ 自分の考え→考えの発表→自分の考え
実験 教室の前と後ろにおもり100gの振り子をセットする。
周期が同じことを確かめる。
片方を200gにして,長さも同じことを確かめる。
重さのちがう振り子をゆらして周期を確かめる。
【周期の確かめ方はいつも】
中央線を通るときに心の中でに,「1,2,3,4」まで数え「5」は,一斉に声を出して,振り向きます。
課題3 おもりをはなす位置を50cmから100cmにしました。 振り子の長さとおもりの重さは変えません。ふりこの1往復する時間は,短くなりますか。
流れ 自分の考え→考えの発表→自分の考え
実験 教室の前と後ろで同じ位置からおもりをはなす。
周期が同じことを確かめる。
片方のおもりをはなす位置をのばして振り子をゆらし,周期を確かめる。
(振り子の糸がたわまないように注意する)
課題4 振り子の長さを2.5mから2mにしました。 おもりをはなす位置とおもりの重さは変えません。 ふりこの1往復する時間は,短くなりますか。
流れ 自分の考え→考えの発表→自分の考え
実験 教室の前と後ろに2.5mの振り子をセットし,周期が同じことを確認する。
片方の振り子を短くしてゆらし,周期を確かめる。
○ メトロノームや振り子時計の話をしながら,実際に周期を短くして遊ぶと面白いです。 メトロノームのおもりの位置を変えることが,ふりこの長さを変えることにつながっていると判断できればよいと思います。 しかし,おもりの重さを変えたと間違う子どももいますから気をつけましょう。
振り子時計やメトロノームは「振り子の長さ」というよりも「支点からおもりまでの長さ」というほうがいいと思います。
~~ 他にも多くの展開が考えられると思います。ふりこの特徴を理解して,楽しく学習してください。 大切な単元が他にあれば,そちらに時間をかけた方がよいと思います。~~
報告 丸山 哲也(科教協委員長)
編集責任 長谷川静夫(科教協静岡)