荒川岳防鹿柵冬期養生作業 篠崎 勇(静岡市山岳連盟)
近年、南アルプス稜線までニホンジカによる食害が深刻化し、お花畑の荒廃が進んでいる。 また、南アルプスはライチョウの生息域の南限でもあり、そこの植生が破壊されるということは、南アルプスにおけるライチョウの絶滅にもつながる。 そこで、環境省は5年前から、荒川岳のカールのお花畑に防鹿柵を設置している。 今回は、冬期の雪圧により防鹿柵が破損するのを防ぐための養生作業に参加した。
日程は9月30日から10月2日までの2泊3日。畑薙ダム夏期臨時駐車場に早朝(6時30分)に集合し、東海フォレストの送迎車両で駒鳥駐車場まで、 そこから千枚岳、荒川三山を経由し、荒川岳防鹿柵冬期養生作業をし、荒川小屋に2泊する計画であった。 真夜中のドライブは、野生動物を見る機会にもなった。運転中に、ニホンジカ(♂)1頭、ニホンカモシカ4頭、タヌキ4頭を見かけた。 しかし、接近する台風18号の影響で、10月1日・2日は雨天の予報、そこで、初日の9月30日に作業を集中し、防鹿柵養生を完了させた。
写真1:ゲート扉撤去作業
荒川岳西カール及び前岳南東斜面の防鹿柵(延長約1050ⅿ)が作業場所であった。 その中を登山道が通っているので、出入りゲート2ケ所の扉を取り外し(写真1)、防鹿ネットを支柱から外して地面におろし、 打ち込まれている支柱杭から支柱を外し、支柱杭に縛り付ける(写真2)のが作業内容。 お花畑の保護のため、全員、登山靴から地下足袋に履き替えての作業となった。
写真2:防鹿柵養生作業
真夜中の車での静岡出発、その日のうちの3000m付近での作業はきつかった。荒川岳カールで作業中見た富士山には傘雲がかかっていた。(写真3)
天気予報は的中し、翌日は風交じりの雨。この日は荒川小屋で停滞。小屋の中でひたすら暇つぶし。 あまりにも退屈し、午後3時から各自持参した酒で宴会が始まった。 最終日、朝から雨。しかし戻らなければならない。朝6時、荒川小屋を出発(写真4)、稜線に出ると雨交じりの強風となった。 休むと低体温症の可能性が出るので、休まない。ひたすら前に進む。東岳(悪沢岳)を過ぎたころから雲が切れ、太陽が差してきた。 10時には千枚小屋に到着。駒鳥駐車場から東海フォレストの車両で椹島ロッジ経由畑薙ダム駐車場まで送迎され、帰途についた。
写真4:雨の中の出発(荒川小屋)