「静岡理科の会 & 科教協全国大会準備会」を、6月27日(土)午後に静岡市の生涯学習センター「アイセル21」で開催しました。その「静岡理科の会」の内容を紹介します。
(1) 入浴剤ロケット製作の授業
授業(高校「科学と人間生活」)で、入浴剤(バブ)から発生する二酸化炭素を使って、ペットボトルを飛ばす実験をしました。その結果を生徒がまとめたレポートからの紹介です。 (紹介:篠崎勇)
→ (リンク先に記事があります)
(2) 土壌動物の採集
右の写真は、手作りの「ツルグレン装置」で、コケと土の中から土壌生物を取り出すものです。ダニやセンチュウ、トビムシは見つかったが、探していた、今CMで有名な「クマムシ」は、今のところ発見できていないです。
「クマムシ」は、体長0.05~1.7mmの4対8脚の緩歩動物で、熱帯から極地方、超深海から高山、温泉、海洋、陸水、陸上とあらゆる環境に生息しています。陸棲種はコケの中に生息するのが多く、また、宇宙空間に直接さらされても、10日間生存できたということです。 (同上)
(3) 不思議な光の実験・おもちゃ
① スーパーボールの中のフィギアは、水の中でなぜ縮む?(凸レンズでの虚像を見ている)
スーパーボールを水の中に沈めると、中に入っているフィギアはスーパーボールに比べて大きさが小さくなって見えます。なぜでしょう? → (リンク先に記事があります)
以下の②と③の実験は、書籍「いきいき物理わくわく実験」(愛知・岐阜物理サークル) から学んだものです。
② しゃぼん膜の割れるときが、なぜわかる?(薄膜の干渉縞)
図の左のような針金枠に、洗剤を水で薄めたしゃぼん液をつけ、面を鉛直に立てると、水平方向に虹の7色(干渉縞)ができます。逆光で見た方が良く見えます。間もなく、干渉縞の上の方のしゃぼん膜に色がつかなく(干渉縞がなく)なって、そこが広がるとしゃぼん膜が割れます。なぜ、割れるとわかるのでしょうか。
図の右は、しゃぼん膜を横から見た模式図です。干渉による縞模様とは、入射光が膜の前面と後面の2か所で反射し、その2つの反射光が干渉するためできます。「干渉」とは、後面での反射光が膜の厚さだけ余分な距離を進むため、2つの反射光が入射側で一緒になったとき、波の波形(山と谷)がちょうど重なる(同じになる)と、強め合って良く見えます。それ以外では弱め合い(波形が打ち消し合い)ます。光は、色によって波長が違うため、強め合う薄膜の厚さが違い、色の縞模様ができます。干渉縞ができなくなると言うことは、重力で膜のしゃぼん液が下に下がり、膜の上部が余りにも薄くなったため、波形がちょうど重なる(強め合う)ことができなくなったことを示します。つまり、膜が薄くなったため、しゃぼん膜が割れます。
しゃぼん液にストローで息を吹き込んでしゃぼん玉を作ると、上部の干渉縞が見えないところが広がったときに、膜が薄くなり割れるのも同じですねと言われました。 (紹介:長谷川静夫)
③ 不思議な筒の中に見える真ん中の膜は何?(光の偏光現象)
上の写真左で真ん中に膜があるように見える筒ですが、中をのぞくと(写真中)何もありません。筒のふたは必要はないのですが、ふたに穴を開け竹ひごや箸などで突けるようにすると、膜が見えるのに何もなくて不思議な感じがします。(手品みたい)
筒の内側には偏光板が貼ってあって、中央の左右の偏光板で透過できる偏光の向きが違うようにしてあります。「偏光」とは、光の波の振動面(波の面)がある向きだけの光波のことです。普通の光はさまざまな振動面の光波が混じっています。その普通の光は、偏光板ではある方向の振動面をもつ光波のみが通ることができます。その偏光板を互いに直角の関係で重ねると、写真右のモデル実験のように、光の波が片方のすだれのすき間は通り抜けられるのに、もう一方のすだれで通り抜けられなくなるという現象がおこり、光が通らなく暗くなります。
下の説明文と図は、静岡高校の生徒が説明したレポートの例です。 (同上)
(4) ネオジム磁石での不思議実験(渦電流、電磁誘導)
強力磁石(ネオジム磁石、またはネオジウム磁石、今の最強の永久磁石)が、100円ショップ(8個入で100円)で買えます。写真の左では、アルミパイプの中にネオジム磁石を落とすと、ゆっくり落ちていきます。他の物体(鉄やプラスティックなどの球)を落とすときと比べると明らかに違います。写真の右は、アルミ板の上でネオジム磁石(写真の枠内は、100円ショップで入手したプラスチィックに埋め込まれたもの)をすべらせる実験でも、やはりゆっくり動きます。
生徒は、磁石がアルミ板に吸い付くためと思うので、まず、アルミニュウムと磁石は付かない(磁化率が弱い)ことを示す必要があります。動くと磁力が生じる理由は「電磁誘導」で、磁石が動くとき金属部分に誘導電流(この場合渦状)が生じ、その電流によって近づかれる側は磁石と同じ磁極が、遠ざかる側は逆の磁極が生じて、磁石の動きを妨げるためです。
この原理を使ったものが、家庭にある電力メーターの回転している円板部分です。 (紹介:土肥新)