小・中連携で小学校で授業をすることになり、この振り子の授業と研究をしたという報告が、「静岡理科の会」で髙橋政宏さん(藤枝市立中学校)からありました。
「振り子」は、小学校では『条件制御』(おもりの質量、糸の長さ、離す角度を1つずつ変えて実験し結論を導く)が授業の主眼であり、中学校では『力学的エネルギー保存』で扱うのみとのことでした。高校では、今は「物理基礎」を選択すれば同様に『力学的エネルギー保存』、さらに「物理」では円運動の応用の『単振動』の1つとしての振り子(力と運動の関係から周期の式を導く)を扱います。
以下は、高橋さんの報告の要旨と意見交換での内容です。 (文責:科教協静岡 長谷川静夫)
A ふりこの振りあがる高さを考えるための教材
実験で、おもりが手放すときと比べ振れた後の高さが高いか低いかを確かめることで、条件を1つ変えたときに運動がどう変化するかを調べる。振れて反対側に来たおもりに対して、もとの高さより少し高いところに音叉を留め、「ふりこはベルを鳴らすことはできるでしょうか」と聞いた。つまり、少し高いため振り子のおもりは音叉を鳴らすことはできない。また、つまようじを粘土で固定しそれを基準として、高さのようすが確認できやすくする。
・反対側に振れたとき、もとより高いところまで上がるという子どもがいる。
・ブランコをこいだ経験で、振れる高さをだんだん上げていくことができることからだろうか。
・振り子を振らし始める位置を「どこまでさげたら、音叉にあたらなくなるか」という聞き方の方が良いかと思った。
・振り子の周期を変えるにはどうするかと聞くと、おもりの重さや大きさを変えると答える子が多い。ただ、振り子の長さを変えるとわかると、メトロノームと同じだと気づく子もいる。
・振り子の振れ幅を変えても周期は変わらないと学習しても、大きかった振れ幅がだんだん小さくなると、ゆっくり振れるようになるという子どもが多数。
B 透明半球を用いたふりこ運動の応用
「透明半球の中でビー玉と鉄球をタイミングをずらして転がしました。2つの玉はぶつかるでしょうか」と聞く。①透明半球内に質量の異なる2つの玉をタイミングをずらして入れると、2つの玉はぶつからず往復する。これは、質量によって振り子の周期は変化しないことで説明できる。②透明半球内で投入する高さの異なる2つの玉をタイミングをずらして入れると、2つの玉はぶつからず往復する。これは、振れ幅によって振り子の周期が変化しないことで説明できる。
・質量が違っても、出発の高さ(振れ幅)が違っても、タイミングをずらして入れると2つの玉がぶつからない(周期が同じ)ことを、子どもは意外だと受け止めた。
・子どもたちには、振り子と同じ運動とはわかりにくいのでは。
・周期が同じとういうこともつかめていないのではないか。
C ハイスピードカメラ(CASIO EX-ZR1000)の活用
撮影した映像をゆっくり観察できるので、振り子の速さや向き、振りあがる高さがよくわかる。動画をプロジェクターで黒板に投影して、一定時間ごとで点を打って運動を記録することができる。また、黒板上の点から運動を議論できる。
D 中学3年数学の二次関数との関連
振り子の長さを変えて周期を2倍にする小学校での実験(小さい振れ幅で実験すれば、きれいに結果が出る)。体育館の舞台を使って実験をした。振り子の長さを33cmで振らせると、周期(1往復の時間)は1.1秒だった。周期を2倍にするために、長さをだんだん長くしていくと66cmではなく、132cm(長さを4倍)で周期が2.2秒になった。では、3.3秒になるには長さをいくらにすればよいかと聞くと、8倍(264cm)という。実際は9倍(297cm)であった。ここで、22=4倍、32=9倍という話をすると、次の周期4.4秒になるのは16(=42)倍と言えた。中学校の学習にもつながることかと思った。
E 中学3年理科の斜面を下る台車の運動の新しい展開
振り子の長さが周期の2乗に比例するという規則性から、斜面を下る台車の運動の新しい授業展開を考えたい。
・教科書では、斜面の実験(記録タイマーでの観察)の後になぜかと考えさせる。事前に予想させる実験を考えたい。
問い合わせ先:高橋政宏 m-takahashi★ra3.so-net.ne.jp(★を@に変えてください)