以下は、 「きくがわ科学少年団」 の例会の2回分のものです。そこで配布された資料を使って内容を紹介します。尚、この資料は12月20日(土)の「静岡理科の会」で紹介されました。(内容の編集責任は科教協静岡の長谷川にあります)
【この記事の目次】
磁石の性質をまとめましょう
電流と磁石
電磁力推進車をつくろう
磁力のはたらき 磁力線のはなし
磁力線を観察してみよう
電気ブランコで実験
磁石の性質をつかって、世界でいちばんかんたんなモーターをつくってみよう
≪磁石の性質をまとめましょう≫
① 磁石は鉄をすいつけます。しかしアルミや銅(どう)のように、すいつかない金属もあります。磁石が鉄をすいつける力を( 磁力 )といいます。磁力ということばをおぼえましょう。
② 磁石にはいろいろの種類があります。U字型磁石、ぼう磁石、黒くてまるいフェライト磁石、中に磁石のこなをいれてあるので、磁力をもっていて鉄にすいつくことのできるゴム磁石。電気をとおすときだけ磁石になる電磁石。それからはりのようにほそく、いつも南北のむきをさすことができる「方位磁石」(コンパス)をみたこともあるでしょう。
③ 磁石には磁力がもっとも強く働く場所(ばしょ)があります。それを磁極(じきょく)といいます。磁極にちかいほど、磁石が鉄ををすいつけるたりする磁力はつよくなります。そしてどんな磁石にも磁極は二種類あります。( N )極と( S )極 磁石のひとつの磁極をN極とすると、磁石の中でそこからもっともはなれた反対側(はんたいがわ)にあるのがS極です。
小さなぼう磁石とくぎかクリップでたしかめてみましょう。
※ N⇒英語のNORTH(北)のかしらもじ S⇒英語のSOUTH(南)のかしらもじ
N極とS極ということばをおぼえましょう。
④ 磁極にはもうひとつ大切な性質があります。それはたがいにひっぱりあったり、あるいは相手(あいて)をきらって、たがいにはなれようとしたりするはたらきがあることです。( N )極と( S )極はたがいにひっぱりあいますが、( N )極と( N )極、または( S )極と( S )極は互いに相手をきらってはなれようとします。
ちがう磁極はたがいになかよし、おなじ磁極はおたがいにきらってしりぞけあう!!
ちいさなぼう磁石で、ふたりでたしかめてみましょう。
⑤
みなさんにちいさなぼう磁石と方位磁石をくばります。そしておたがいにちかづけてみましょう。じつは方位磁石のはりは、とてもちいさな磁石になっていて、自由にうごきます。そこで磁石のS極を方位磁石にちかづけるとはりの一方がひっぱられます。それが方位磁石のN極です。(あなたの方位磁石のN極はなに色ですか⇒( 赤 )色)
そしてはりのはんたいがわの先が方位磁石のS極です。ぎゃくにいうと方位磁石のはりをつかうと、磁石のS極やN極をみつけることもできます。
そして、方位磁石のN極はいつでも、北の方向(ほうこう)をさす性質があります(だから方位磁石のS極はいつも南をさします)。そして、この性質をつかって、山の上や海の上で、方向を知るのに方位磁石はつかわれます。(写真は大きな船についている方位磁石の羅針盤(らしんばん)といいます)
≪電流と磁石≫
なんかいもエナメル線をぐるぐるとまいたものをコイルといいます。コイルのなかに鉄のぼうをいれてコイルに電気をながすと電磁石ができることは、みなさんはしっていますか。じつは、コイルに電気をながすだけで、(その中に鉄のぼうがなくても!)コイルは磁石になります。
実験 コイルをつくる
①-1 くばられたエナメル線を単一乾電池(またはおなじくらいのふとさのまるいつつ)に約30回まきつけてコイルをつくってください。コイルのりょうはしは15センチくらいだしておきます。コイルをはずしてばらばらにならないように何か所かセロテープでとめてやりましょう。板の上でカッターの刃(は)をつかって3センチくらいエナメル線をきれいにむいておいてください。(図の①)コイルはふたつつくっておきましょう。
そのコイルを板のうえにセロテープをつかってたててください。そのすぐよこに方位磁石を置きます。(図の②)【編集注】山内さんは、仮に少し怪我をしても作業経験は大切とのこと。
①-2 電池ボックスに線をつないで電池をはめて、電気をながす用意をしましょう。
①-3 つぎに、コイルと電池ボックスをクリップ線でつないで、コイルに電気をながします。つなげるとすぐに方位磁石のはりがうごいて、コイルに磁極ができたことがわかります。はりのうごきから図②のコイルの右側(方位磁石の側)は何極になりましたか。また、電池ボックスをつなぎなおして電気のながれの向きを逆にしたらコイルにできる磁極はどうなりましたか。その結果をつぎの図にかいてください。
この結果はつぎのようにまとめられています。
この図は中学にいくとかならず勉強します。これは、右ねじの法則とよばれています。あなたの実験はこの図のとおりになりましたか。
【編集注】小学生には難しかったようです。今わからなくても、法則があると知れば良いとのこと。
≪電磁力推進車(でんじりょくすいしんしゃ)をつくろう!≫
コイルに電気を流すと磁石の性質ができる、そしてその磁極は電気の流れのむきでかわることがわかりました。そこで、それをつかって車をうごかしてみます。
① 車を組み立てる くばったキットをつかって車をくみたててください。このキットはほかの実験もできるので、いっしょについている部品は家にかえってやってみてください。
② コイルのとりつけ くばられた四角いスチロールにセロテープで、さきほどつくったコイルを図③のようにとりつけて、さらにそれを図④を参考に、両面テープで車にとりつけてください。
③ 電池ボックスのとりつけ 図④のように、まえにつくってあった電池ボックスふたつを、車の前のほうに両面テープでとりつけます。ボックスはふたつがよこにはめこみでつながります。図④のように電池をいれてください。
④ くばられたフェライト磁石の磁極をしらべる まるいフェライト磁石は、うらおもてで磁極がちがいます。方位磁石をつかって、どちらがわが何極かしらべてください。そしてフェライト磁石にエンピツでかいておきましょう。
⑤ 線をつなげて動かしてみよう これで電磁力推進車はできました。線をつなげば動かせます。(【編集注】ここでは電池1つでの実験)
まず図④の電池の②の線をコイルの⑤の線、そして電池の④の線をコイルの⑥の線につなぎます。そうすればコイルには磁石の性質がうまれます。この時コイルには電池ひとつぶんの1.5ボルトの電気が流れます。電気のながれは電池のプラスからマイナスですから、コイルのまいてあるむきで、右ねじの法則をあてはめると、コイルのうしろが何極になるかわかります。方位磁石でたしかめてみましょう。
そこでこんどは、車のうしろからフェライト磁石を手で持ってコイルにちかづけてみてください。
コイル(ということは車)は、磁石にひきつけられるか、逆にはなれるはずです。ひきつけられる場合はフェライト磁石をうらがえして、はなれるようにしてください。そして、車のうしろから手で持ったフェライト磁石をちかずけていくと、どんどん車は前に進みます。磁石であとをおいかければ車のはやさもはやくなります。
※ ここで注意! 線をつなぎっぱなしにすると、電池やコイルがすぐ熱くなって、電池がはやくおわってしまうので、線のつなぎめ(ここでは②と④か⑤と④と⑥)のどちらかをクリップ線でつなぎましょう。クリップ線だと必要なときだけつないで、すぐはずすこともできます。車をうごかさないときは、クリップ線をはずしておきましょう。
⑥ 車のはやさをしらべよう ふたりに1台づつ、ストップウオッチをくばりますので、2メートルを何秒ではしったか記録しておいてください。公会堂に3メートルのコースがつくってあるので、ふたり一組で協力してそれぞれの速さをはかってみましょう。何秒で2メートルをはしりぬけましたか。はやさくらべをやってみましょう。
≪磁力のはたらき 磁力線のはなし≫
磁力は、磁石が相手をひきつける力です。あるいは、磁石のN極だったらはんたいのS極をひきつける力といってもいいでしょう。ところが、力というものには、それがどんな力であっても、その力がはたらく「むき」というものがあります。たとえば、地球には「引力」があって、その力によって石は下にひかれておっこちるのはみんなしっていますね。つまり引力が「下むき」にはたらきます。それでは、磁力はどんなむきに働くのでしょうか。次の図は、ぼう磁石のまわりのいろんなばしょに方位磁石をおいてやるとどうなるかを示したものです。
磁石のS極はN極をひきつけますが、このちからのはたらく「むき」をつなげてみると。図のようにN極からはじまってS極にむかう一本の線になります。この線の上においた方位磁石のはりは、かならずその線にそったむきにひっぱられます。
そこで約束 科学者たちは磁力についてつぎのように約束をきめました。
この磁石のはたあらく「むき」にそった線のことを「磁力線」とよびます。磁力線はN極からはじまってS極でおわると約束されています(そこにおかれた方位磁針のはりのN極をさしているむきになります)。磁石のまわりでは、磁力線は何本でもかんがえることができます。
【編集注】山内さんは、ここでは後から実験結果として説明をするより、先に磁力線とは(約束)を示してしまう(与える)方が、スムーズに理解が進むと感じたとのこと。実験後に説明をするか、約束(定義)を示してから実験で確認するか、場合によって工夫があると感じます。
≪観察 磁力線を観察してみよう!≫
① 磁力線観察機(プラスチックの箱)で、ぼう磁石のまわりのいろんなところに方位磁石をおいて、前の図のように、方位磁石のはりが磁力線のむきをさすことをたしかめよう。
② 磁石の上に置いた磁力線観察機と鉄のこなを使って、ぼう磁石やU字型磁石の磁力線を観察してみよう。
※ 注意
1、白い紙を下にひいて実験する。磁力線がよくみえるから。
2、鉄の粉は50センチくらいの高さからすこしずつしずかにまく。
3、一回実験が終わるごとに、鉄の粉を別の紙にあつめて、ビンにもどす。
4、磁石と鉄の粉は絶対にちかづけない。粉が磁石につくと、とれなくなります!!
磁力線の形に鉄の粉がならんで、前の図のような磁力線がはっきりわかると思います。磁石の近くでは、鉄の粉も一粒一粒が小さい磁石になるので、磁力にひっぱられて磁力線の形にならびます。
≪電気ブランコで実験!≫ これは班で一つつくってみんなで観察をしてみます。
まずつぎのようにエナメル線を7回ぐらいまいた四角な輪をつくります。図のように3か所ぐらいセロテープで輪がばらばらにならないようにとめておきます。りょうはしはカッターでけずっておきます。
この四角な輪を、くばられた箱にセロテープでつぎの図のようにとめてください。そして別にくばられた電池とスイッチをクリップ線でつなげます。スイッチをおすと輪に電気がながれるようにしておきます。このしかけは電気ぶらんことよばれています。
さてスイッチをいれて電気を流すと、前にやったように輪は弱い磁石になります。(右ねじの法則の)図のように右手をつかってかんがえて、輪のこちらがわはN極になるかS極になるか予想してください。
※ 注意! 実験する時だけスイッチをいれる。電気を流しっぱなしにすると、すぐ電池がおわってしまいますので注意してください。
では、その予想があたっているかどうか、方位磁石をもっていって確かめてみましょう。
また、予想があたっていたら、つまりたとえば輪のこちらがわがN極になっていたら、別の磁石のS極を輪にちかずけると輪は磁石にひきつけられるはずですし、おなじN極をもっていけば輪はおくのほうにはなれるはずですね。確かめてみましょう。
ところがここでもっと不思議なことがあります。
電気ブランコの輪のなかに、下の図のようにU字型の磁石のかたほうをさしこんで、スイッチをいれて電気を流してみてください。前よりも大きくブランコがゆれませんか。U字型磁石をひっくりかえして、輪の中に入れる極を反対にすると、ブランコのゆれかたは逆になります。ためしてみてください。
上の図のAのようにN極からS極にむかう磁力線のなかに電線をいれて、そこに電気がながれると、その電線はよこむきの力をうけて「電線がよこにうごかされる」のです。(図のB)
これも中学で勉強します。「フレミングの左手の法則」といいます。
このことをうまく利用して、つまり磁石があって、電池をつかって電気のながれをつくってやれば、図Bのようにうまれる力を利用したものが、みんなもしっている「モーター」なのです。モーターはすべてこのような力をつかってうごいています。
≪磁石の性質をつかって、世界でいちばんかんたんなモーターをつくってみよう!≫
モーターがまわる台をつくる
1、いちばん大きいクリップをつかいます。
まずペンチでクリップのやじるしのところからのばして①のかたちにします。できるだけまっすぐにのばしてください。つぎに②のようにまげてください。図にかいてある寸法に気をつけて! つぎに③④のようにじゅんにまげていきます。寸法をたしかめながらやってください。
2、電池をいれるケースをあつがみでつくります。
⑤のあつがみを⑦のように単一電池にまきつけて、⑥のようにしかくにしてください。電池がそのなかにぴったりはいるようにします。ゆるいとダメ。セロテープであつがみをとめて、しっかりした⑥のかたちにします。
3、電池に1のクリップをとりつけます。
アルミホイルを4回くらいおりたたんで、ちいさくきったものを⑧のように、電池のりょうがわにつけて、そのうえから1のかたちにまげてあるクリップをおしつけて、⑨のようにセロテープでとめてください。⑩のように電池の両側にクリップをとりつけます。それを2のあつがみのケースに⑪のようにいれてやるとできあがりです。電池をいれてゆるかったら、あつがみのきれはしを両側にいれてきつくしてやってください。
モーターが回転するところをつくる
⑫のようにまるいもの(ここではフィルムケース)にエナメル線を7回くらいまきつける。りょうはしは10センチぐらいのこす。
⑬の※1※2のように、りょうはしをまいたエナメル線に2~3回まきつける。このとき※1と※2のばしょは、エナメル線の円のまんなかをとおるようにちゅういする(図Aはだめ)。そして※3のほうからみて、りょうはしがまがっていないで、できるだけまっすぐにする。(⑬の図Bはだめ)
⑭のように、りょうはしの線のBは、カッターやサンドペーパーをつかって、もとからぜんぶエナメルをけずりおとす。Aは図のように上半分だけけずる。
【編集注】この回転子(コイル)から伸びる導線の一方(⑭のA側)の上半分だけみがくというのは、子どもだけでなく我々でも難しい。(両側とも全部をみがいてしまうと、回転子の導線に常に同じ向きの電流が流れ、導線の位置ごとに同じ向きの力になり回転しない。片方を半分みがくと、電流が流れないときは惰性で回転を続けるので、一定の向きの回転になる)
このときの「理科の会」で出されたアイデアとして、「A側も全部みがき下半分をマジックで塗って電気が通らないようにする」と「A側は導線を長くして、その先の半分の部分を全部みがき、そのみがいた部分を上側に折り返すと、半分をみがいたのと同じになる」という案が提案されました。たいへん良いアイデアと思います。
また、山内さんによると、回転子は軽い方がよいが、細い導線だと子どもが工作するのに難しくなるので、太さと巻き数の調整が必要とのことです。
モーターの組み立て
図のように、フェライト磁石を電池の上にはりつけ、その上にりょうはしをクリップにのせ(回転するところをのせ)、そっとゆびでおすとまわりはじめます!!
モーターがなぜまわるのか?
⑭でAとBのエナメルのはがしかたをかえたのが、ポイントです。クリップは電池につながっているので、輪には電気が流れています。もし磁石をN極を上にしておいたら、そこからは磁力線が上むきに出ています。 フレミングの左手の法則をもとにして、なぜまわるかかんがえてください。
山内一徳さんが主宰する「きくがわ科学少年団」は、菊川市六郷地区コミュニュティ協議会の事業の一環として、(中学生にも呼びかけたが希望者がいないため)3年生以上の小学生を対象にしています。2009年度から年10回程度の例会や見学会を続けて6年になるそうです。参加する子どもは約30名とのこと。少年団の目的としては、「①こどもたちが科学の世界を直接体験することで、科学のすばらしさおもしろさを体験し、みずから探求しようとする態度を養う。……。②地域社会にこどもの生活の場としての異年齢集団を復活し、その活動に多くのボランティアがかかわること……。」としています。小学校の内容(授業)に直接は関連させていないとのことで、難しいことにも取り組みます。この実験や考えの進め方については、中学校以上でも参考になる内容があります。
問い合わせ先:山内一徳(きくがわ科学少年団)ymchkznr@sea.plala.or.jp