種子の発芽で栄養物質を消費する実験
植物は発芽に伴って,種子に貯蔵している栄養物質を消費します。 この現象は,インゲンマメの子葉が,発芽後の成長に伴ってしおれていくことで確認する方法が一般的です。 しかしオオムギの種子を用いると,発芽経過に伴ってデンプン粒が分解していく様子を顕微鏡で観察することができます。 また,米,麦,トウモロコシなどの主要穀物が種子であることを理解させ,6年次の植物と動物とのかかわりや光合成の学習につなげる足がかりをつけたいものです。
1 発芽実験で準備するもの
オオムギの種子(種苗店で注文する1kgで1,000円程度,あるいは「猫の食べる草」としてペットショップで購入できる)
カミソリあるいはカッター・ヨウ素液・キッチンペーパー・バット
2 デンプン粒の観察方法
(1) バットに脱脂綿やキッチンペーパーを敷き,水を入れてオオムギの種子を置く。
(2) 水を含み柔らかくなったオオムギの種子をカミソリで縦断する。
(3) 一方の断面にヨウ素液を作用させ,反応を確認する。
(4) もう一方の断面を2枚のスライドグラスになすりつける。
(5) 一枚のスライドグラスには水を,他方にはヨウ素液を加え,カバーグラスをかけてから検鏡する。
3 発芽によるデンプンの減少実験
オオムギの種子を吸水させて数日おくと,まだ発芽していないものから,子葉が成長しているものまで,いろいろな成長段階のものが得られる。 そこで,子葉が5cm程度に成長したものと,まだ発芽していないものを比較してみる。
インゲンマメのデンプン減少は,種子が緑化してヨウ素反応が見分けにくいことが大きな問題である。 オオムギやモロコシ等の単子葉植物は,種子の中のデンプンが糖化することによって発芽の栄養に姿を変える。 発芽や成長にデンプンが使われていることが実感しやすい。
デンプンについて
発芽の養分としてのデンプン(5年),光合成産物としてのデンプン(6年),動物の消化で扱うデンプン(6年),と繰り返し登場します。 役割も,エネルギー源,体を作る材料など,それぞれで異なります。 小学校の場合,ほとんどの単元で材料を植物・動物に分けて扱いますが,その中でも共通して登場する物質です。
種子が吸水するとアミラーゼなどの酵素が活性化し,デンプンは分解されます。 分解によって生じた物質が呼吸によってエネルギーを生み出します。このエネルギーが発芽には必要であり,そのため空気(酸素)が発芽に必要となります。
単子葉植物の発芽について
小学校理科では双子葉植物を主に扱うため,「発芽すると2枚の子葉が出てくる」と覚えている子どもも多くいます。 ここで扱うオオムギなどのイネ科植物やトウモロコシなどの主要穀物は単子葉植物であり,1枚の子葉しか出てきません。 子葉の違いに興味がある子どもには,双子葉植物と単子葉植物の違いについて調べさせるとおもしろいでしょう。
以上は、科教協静岡の第6回「研修交流会」(2014.5.17) で、丸山哲也さん(科教協山梨支部)から紹介されたものです。