「科教協静岡」の第6回「研修交流会」で、片山昇さんから紹介された実践(資料)と、会での意見交換を含めてまとめました。(科教協静岡:長谷川)
中学3年生の物理分野「運動とエネルギー」は、生徒にとって苦手意識が高い分野である。力は目に見えない。 その力をどう捉えさせるか。1年生の力の学習がどうなされているか。また、合力、分力も苦手意識が高い。
「運動とエネルギー」の単元は、①物体にはたらく力、②物体の運動、③仕事とエネルギーの3つの章から成り立っている。ここでは、①物体にはたらく力の合力、分力をどう扱ったかを報告する。
・力のつり合いを、中1の復習もいれながら意識化させる。
・力の分解を理解させるため、力の合成をていねいにおこなう。
1 力
(1) リンゴを持って、手を離すとリンゴは落ちるが、この力は→重力(地球がすべての物体を地球の中心に引く力)。力の書き方も復習する。
・重力がないと→無重力という。体は浮いてしまう。
・月の重力→地球の6分の1
(2) リンゴには重力が働いているにもかかわらず、(リンゴを手に持っている時)リンゴが落ちないのはどうしてか?→手が支えている。
・手の出している力の方向は→上向き
・手の出している力の大きさは→リンゴの重力と同じ
*上向きの手の力と、重力の大きさが「釣り合っている。」
*手の力が大きいとリンゴは上に行き、手の力が小さいとリンゴは下に行く(落ちる)
*「リンゴにはたらく力」を図に書いてまとめる。
(3) ばねに「おもり」をつけてつるすと、おもりにはどんな力が働いているか。【考えさせる】
☆【考えさせる】の時は、個人の考えを書かせ、全体に紹介し討論する。
・重力とばねが元に縮もうとする力(弾性の力)があり、つり合っている事を確認
*つり合っているときは、①力の大きさが同じ ②向きは逆 ③一直線上を確認
(4) 机の上に「おもり」を載せているとき、おもりに、はたらく力はどんな力か。【考えさせる】
・上向きの力があるのか?
・重力と机が少し縮んで元に戻そうとする力(抗力)があり、釣り合っている事を確認
2 摩擦力と浮力
(1) 復習 【実験】ばねばかり、段ボール板
・2人組で実験。お互いに引くと、同じ大きさで向きは反対、一直線になることを確認
(2) 摩擦力
・物体を机の上で滑らすと,やがて止まるのは→摩擦力
・摩擦力は運動と逆方向にはたらく力
・摩擦を少なくする方法→ころを使う【実験】
摩擦力は面の状態によって大きさは変わる。車のタイヤは摩擦が小さい
・ピンポン球を水の中に入れて手を話すと浮いてくる→浮力がはたらくからである。
・水に沈めた石には浮力がはたらくか【実験】→はたらく。
↓
・なぜ,浮いてこないのか?
*重力の方が浮力より大きいので石は浮かないが,ピンポン球は重力より浮力が大きいので浮く。
*もしも,重力と浮力が同じなら→2力はつりあって動かない。
3 力の合成(足し算)
(1) 一直線上で力を合わせる(二人で重い物体を引くとき)
・Aさんの力をF1=10kg、Bさんの力をF2=20kgとする。
・物体からみたら,30kg=Fの力で引かれていると同じ。
・この力Fを力F1と力F2の合力という。
・合力を求めることを、力の合成という。
《編集注》力の単位が「10kg」は「(重量が)10kg分の力(と相当)」という意味で、今では「約10N(ニュートン)」とするのが良い。
(2) 練習問題(プリント)
《会で出た意見等》
⑤で合力を斜めに書く生徒がいるがなぜだろう。/五円玉にゴムをつけ、左右に力の大きさを変えながら引っ張るとき、動く方向から合力の向きが確認できる。
4 力の合成(角度のある場合)
・大きな船を2隻で引く場合角度をつけて引く。
この場合、2力の合力はどうしたらいいだろうか?
↓
角度のある場合は、単純に足し算、引き算できない。
*三角定規を使って平行四辺形をつくり、対角線(合力の大きさ)を作図
・三角定規の使い方を説明する。→(プリント下の左へ)
5 力の合成(角度がある場合2)
・グラフがあると簡単にできる
・分力の角度を大きくしていくと、合力はどうなるだろうか?→(プリント上の右)
【まとめ】分力の角度を大きくしていくと、合力はだんだん小さくなる。
分力の角度を小さくしていくと、合力はだんだん大きくなる。
6 3力のついあい
F1F2を動かさなくするにはどうするか?
逆向きでF1F2の合力を書く
F1F2を動かさなくするにはどうするか?
F1F2の合力と同じ大きさで逆向きの力を書く
③ 練習問題(プリント)
F1、F2につり合う力Fを記入しなさい。
7 分力(ばねの伸びはどうなるか?)
(1)
問題1 図の場合、力の大きさ(ばねののび)はどうなるか。
100gのおもりをつるすと、ばねばかりの目盛りはA、Bどうなるか?
【まとめ】ABとも50gを示す。力は2等分される。
(2) 問題2 図のように角度のある場合は、力の大きさ(ばねののび)は、問題1と比べてどうなるか?
【予想】ア、問題1より大きくなる
イ、問題1より小さくなる
ウ、問題1とおなじである
【意見】
・ばねは2つだから、やっぱり同じで50g
・二人で持ち上げるとき、角度があると大変だから問題1より大きくなる。
・前にやった合力の反対だから、角度を大きくしていくと大きくなる。
【答】ア(大きくなる)
【まとめ】
・一直線上の場合は、力は2分の1(50g)になる。
・角度がある場合は,バネばかりにかかる力は50g以上になる。
・角度を大きくしていくと,バネばかりにかかる力のだんだん大きくなっていく。(120度で100g)
《会で出た意見等》
イの小さくなるが少なかったとのことで、この問いの前の学習が生きていたとわかる。/高校生でもみんなが自明と思っているとは言えない。経験が少ないためか。
8 分力(なぜ角度を大きくすると、バネにかかる力は大きくなるか)
(1) 2力とつり合う力を使い説明する。
この図を縦にし、つり合う力をおもりと考える。
ななめの2方向にこの力を分解するという考え方=分力という。
(2) 分力の練習問題を行なう。(プリント)
◎ 荷物を運ぶときは、なるべく角度を小さくする。
《会で出た意見等》
図1で大きい力を出す糸はどちらと問うと糸Aが割合多かった。7(2)の問題2で傾きが大きいほど力が大きくなるからだろう。 説明前にばねばかりで示すと理解が深まる。
力を考えるとき、ばねを使うとわかりやすい。