静岡大学農学部付属地域フィールド科学教育研究センター(水圏生態系部門)の訪問記
2009年8月、浜松理科の会の杉山直樹さんの企画で、静岡市用宗(用宗漁港の西隣)にある静大農学部のこの施設を訪問しました。
当日は、鳥山優教授に立ち会っていただき、また、担当者から詳しいお話しを2時間程伺いました。 熱心に対応していただき、初めて知ることに驚くとともに、地域の環境や外来生物の問題に関心が広がりました。
研究センターの施設内部
(写真のカメは食事・排泄中で、水のある所が気持ち良いとのこと。その後、土の所に移す)
以下で、そこで教えていただいたことと、Webで検索し理解したことを含め紹介します。以下の文の責任は科教協静岡事務局です。
イシガメ(ニホンイシガメ)は日本固有種で、他方クサガメは昔からいるが固有種ではない可能性がある。また、そのハイブリッド(交雑種)が多数見つかるようになってきた。しかも、アカミミガメ(幼体はミドリガメとも呼ばれる)が自然環境で増え、また逆に、日本のカメは見つかりにくくなってきているということでした。
イシガメ(幼体はゼニガメと呼ぶが、今はクサガメの幼体がゼニガメという名で売られているようです)は、日本の本州・四国・九州等に分布する日本固有種。 は虫類(綱)のカメ目イシガメ科イシガメ属に分類されています。 他方、クサガメは、日本では本州・四国・九州等に分布するが、国外では中国東部・台湾・朝鮮半島に分布しています。
イシガメとは違い、クサガメは国内では化石が見つからず、江戸時代中期以前の古い文献に出てこないので、クサガメは外来種の帰化ではないかと考えられるようになりました。 現在売られている子ガメは、中国産、またはそれを飼育繁殖したものが多いようです。カメ目イシガメ科クサガメ属に分類されています。
ニホンイシガメ
椎甲板に断続的な筋状の盛り上がり。後部縁甲板の外縁は鋸状。色彩は黄褐色、褐色、灰褐色、暗褐色など、個体変異が大きい。
クサガメ(くさい臭いがあり、名前の起源)
背甲はやや扁平で、上から見ると細長く角張った楕円形。椎甲板と肋甲板に3つずつの筋状隆起あり。色彩は褐色、灰褐色、黒など、変異大。
生態としては、イシガメは、比較的山麓部の川や池・沼に棲息しているのに対し、クサガメは、平地の川や池・沼、湿地に棲息しています。 水田にも良く順応して生活をしていました。 しかし、農薬・化学肥料の使用や水の汚染、水田の減少、池・沼の埋め立て、護岸のコンクリート化などで、そうした野生のカメの適切な生活場所がなくなってきています。
動物で種が違うと、まして属が違うと、その間の交雑種(ハイブリッド)はできない、繁殖しないはずです。 ところが、10年前ぐらいから、そのハイブリッドが多数見つかるようになってきたとのこと。 違う「属」と分類することが誤りとなります。 また、見つかる数が増えたのは、遺棄されたクサガメの増加、棲息環境の悪化で、2種が接触しやすくなったためもあるのでしょうか。
ハイブリッドの増加、外国産のカメのペットとしての販売など、純粋なイシガメを種として守ることが難しくなってきたのでしょうか。 子どもたちとカメのことを学び、生物と自然環境のこと、野生種の保護に必要なこととペット飼育のマナーなどを、広める必要性を強く感じました。
食性は、雑食です。寒い時期には冬眠もするのですが、驚いたことに肺呼吸をするは虫類なのに、クサガメ(?)は、寒い時期に水底に潜りっぱなしでじっとしていられるということでした。 皮膚呼吸や、喉の内部の粘膜などに密に分布する毛細血管を利用して、水に溶けている酸素を吸収しているそうです。
それぞれ、20cmぐらいにまで成長するようで、大きなカメが飼育容器の中でごそごそしているのは、なかなかすごいものでした。 施設内では、行動力があり逃げてしまうと、各入口には高さ20cmほどの衝立がありました。 小さい内に購入飼育して大きく成長し、行動力も大きくなり飼えなくなって、自然界に遺棄することはありそうに思います。 ペットショップや販売業者は、大きくなることまで含めて十分伝えて販売するべきでしょう。 逆に言うと、学校などで飼育し、姿を見せておくことも必要かもしれません。 人工飼料でも育つようです。食事と糞は、水のあるところでする(気持ちが良いから)が、その後は、土のあるところに移すようです。 体を乾かすライト(暖房器具)もありました。
アカミミガメ(幼体はミドリガメと呼ばれ、販売されている)は、アメリカ原産の移入種です。 アメリカでは、開発での棲息地の破壊やペット用としての乱獲で減少し、野生の採取が禁止されたり、ペットの放流等で亜種間の雑種が懸念されているようです。 日本では、要注意外来生物に指定されています。生活力が強いようです。 カメ目ヌマガメ科アカミミガメ属。
【追記】2013年6月1日から、「条件付特定外来生物」に指定され、飼育は認められていますが、野外への放出、販売、購入等が原則禁止されました。
知った上で見ると、静岡市内の公園等の池、例えば駿府公園の堀では、カメの多くがアカミミガメのようにみえました。
文責 科教協静岡 長谷川静夫 (skrc@sf.tokai.or.jp)