「きれいな結晶づくり」講座にて(2009年8月16日~17日)
色をつけた完成カリミョウバン結晶
以下は、講師の米沢剛至さん(科教協会員)から学んだ内容を文章化しました。(科教協静岡)
ミョウバンの結晶づくりには、暖かい時期が適切で、米沢さんは4月~8月に作っているということです。 以下の内容は、8月前後の条件でのものです。
(1)カリミョウバンの飽和溶液をつくる(事前準備)
カリミョウバンは、結晶水がついている結晶(水和物)を使います。30℃では、水1L(リットル)について、ミョウバン(水和物)約165gで飽和になります。 したがって、それより多めにミョウバンを加えて、(温度を上げ)十分に溶かしておきます。
ミョウバン結晶づくりでは、前日より前に作っておく方が良いとのことです。 結晶づくりに取りかかる時には、容器の水溶液の底に結晶がいくらかは析出している必要があります。
(2)種結晶をつくる(事前準備)
作ってあったミョウバン飽和溶液を50~100mLとって、その水溶液100mLにつきミョウバン15g程度をあらたに加えて、加熱溶解します。 それをタッパーなどの底が平らな容器(多少凹凸があっても可)に深さ5mmぐらいまで流し込み、そのまま室温冷却で1日程度成長させます。
放置してすぐ小さな結晶が大量にできはじめたら失敗です。加熱溶解して再度やりなおします。
(3)種結晶を釣り糸で容器につるすようにくくる
釣り糸(テグスの0.8号か1号)を使って、種結晶をとめます。めんどうな細かい作業で慣れも必要なようです。 金属線を加熱して種結晶に突き刺すという方法もあるようですが、米沢さんは美意識からしないとのこと。 瞬間接着剤でとめるという方法を聞いたこともありますが、どうでしょうか。
テグスを15cmぐらいに切って用意します。下に黒い紙を置けば、ややテグスが見やすくなります。 結晶面の平行なところを使って、テグスをしぼりとめます。(種結晶が落ちて、なかなかうまくいきません)
テグスの一方を割り箸にしばって、容器の中につるす準備をし、また、余分なテグスは切り取っておきます。 1本の割り箸に2つの種結晶をつるすのが良いでしょう。(1つのビーカーで2つずつ結晶を作る)
(4)小さいがきれいな結晶づくり(授業での実験・実習で活用できる方法)
作ってあったミョウバン飽和溶液の必要量(100mLビーカーに取り分ける全体量)に、その水溶液100mLにつきミョウバン5g程度をあらたに加えて、加熱溶解します。(この追加分が種結晶を成長させることになる) まだ熱い水溶液を、それぞれ100mLビーカーに取り分けます。色をつける場合には、水溶液が熱いうちに色素を入れます。 (絵の具では豆粒大、色素では小さじ半分程度を入れます。入れない無色透明の結晶も十分にきれいです。)
色素には、メチレンブルー、サフラニン等、絵の具では、ペンテルFの絵の具が適当とのこと。 絵の具によっては凝析する(色素が液中で集まって沈殿物が生じる)ことがあって使えないものがあるので、あらかじめ少量の液で確認をする方がよいようです。
温度が40℃まで冷えたら、各ビーカーに2つずつつるした種結晶を入れて、静かに1日置いておきます。(常温放置) 翌日に取り出して、良く成長した結晶は完成です。こぶができていないなど、きれいな結晶ができる成功率は、およそ50%だそうです。
形良く成長していない結晶は液にもどし、また、成功した結晶の質量分のミョウバンを加えて、再度加熱溶解すると、次の結晶づくりに取り組めます。
特に夏は、ミョウバン水溶液にカビのようなものや藻?が発生して濁ってくるそうです。 そのときは、そのまま加熱溶解してその後ひだ折りしたろ紙でろ過をすれば、再度使えるとのこと。
(5)やや大きめの結晶(5~10g)を作る
作ってあったミョウバン飽和溶液の必要量(200mLビーカーに取り分ける全体量)に、この場合では、飽和水溶液200mLにつきミョウバン25g程度をあらたに加えて、加熱溶解します。 200mLビーカーに取り分けた後に色をつける場合は、(4)と同様です。
クーラーボックス、または発泡スチロール箱にお湯を入れ、その中にこのビーカーを並べて浸けます。 温度が47℃に下がったら、2つずつつるした種結晶を入れ、ふたをして動かさないようにし、 1日をかけてゆっくり冷やします。
この場合の成功率は30%程度のようです。場合によっては全滅ということもあるそうです。 2つのボックス(箱)でやった方が、うまくいく確率も高まるとのこと。
(6)密度対流法による大きな結晶の作り方
この方法の名付け親は、大阪の科学教育センターにいらっしゃった利安さんという方だそうです。 米沢さんは、ガラス器具をペットボトルに変えて、使用後に底にくっついた結晶を取り出しやすくしたとのこと。 その他、いろいろな方が工夫をしているようです。製作セットが理科教材会社からも販売されています。
2L型のペットボトルで、上の口の部分を切り取った直方体形の容器に、ミョウバン飽和溶液を入れます。 また、ストッキングにミョウバンをつめてしばり、ストッキング(袋)の底から数cmのところに大きめのミョウバン種結晶をつるして、 その全体をペットボトル容器のミョウバン飽和溶液の中につけてつるします。 そのペットボトル容器を水の中につけ、温度が余り変化しないようにして、1か月程度放置すると、 結晶が大きく成長するそうです。
ストッキングは、百円ショップのものでは弱くて不適当とのことで、メーカー品を使いましょう。 水溶液にほこりが混じらないように、容器の上部をラップとかビニール袋等で被います。外側の水は、時々加えて水位が下がらないようにします。
参考文献
「ちょっとやってみようかな化学」米沢剛至著 日本評論社
結晶づくりのさらなるこつの掲載があります。 その他、美しい実験、おいしい実験、実験の小技や、ハンドクリームなどのものづくり、授業の内容を深める定番実験の工夫等々があります。
「科教協静岡」の行事に、兵庫県の米沢剛至さん(科教協会員)を講師に招いて、「きれいな結晶(カリミョウバン)づくり」を実習を通して学ぶ学習会を開きました。米沢さんは、科教協全国大会での行事「科学お楽しみ広場」に、毎年「米沢宝石店」と名乗ってきれいな結晶を出展している方です。今回、「日産科学振興財団」から助成を受けたということで、わざわざ静岡まで来て、教えていただきました。 (文責:科教協静岡 長谷川静夫)